陸上自衛隊のイラク派遣部隊に関し、政府が「ない」としてきた日報が見つかった問題で、陸自の発見から小野寺五典防衛相への報告まで、2カ月半以上の「空白」があることが3日、分かった。報告は先月末で、18年度予算成立に配慮したとの説も。野党は、財務省の決裁文書改ざんも、報告時期に影響した可能性があるとみて、「時間稼ぎの隠蔽(いんぺい)だ」と反発。今後、小野寺氏の責任も追及する。財務省の問題が収束しないうち、新たに公文書のずさんな管理が露呈。安倍政権には打撃で、逆風は止まる気配がない。

 「ない」とされた文書が、また「あった」。森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざんと同じような問題が、デジャヴ(既視感)のように発覚。再び、安倍政権を揺るがし始めた。

 イラク派遣部隊の日報の有無は、稲田朋美防衛相時代の昨年2月に表面化したが、政府は野党に「不存在」とした。防衛省はその後、南スーダンPKO日報問題を教訓とした再発防止策として、統合幕僚監部の参事官が日報を一元管理すると決定。昨夏以降、全部隊の保有文書を調べる中、イラク派遣部隊の日報の一部の保管が分かったという。

 陸自研究本部が今年1月12日、陸上幕僚監部衛生部が1月31日、文書の存在を陸幕総務課に報告。しかし、陸幕が統合幕僚監部に一報を入れたのは、2月27日だった。統幕から小野寺氏への報告はさらに遅れ、年度最終日の3月31日。1月の存在把握から大臣への報告まで、2カ月半以上もかかったことになる。

 3日、国会内で野党が開いたヒアリングでは、防衛省統合幕僚監部の幹部に、「空白」の理由を問う質問が相次いだ。今回確認された日報は、約1万4000ページ。統幕幹部は「分量が多く、事実関係を確認していた。確認しないと報告できず、まとめた上で大臣に報告した」と主張した。

 しかし、幹部らはその間の3月12日、小野寺氏から情報公開や文書管理の徹底を指示されていた。指示を受けても日報発見について報告しておらず、「あったことをまず報告するのが行政の任務。大臣をだました」との批判も。一部ではなく「全体を把握した上での報告」という方針は、文書改ざん問題の財務省の主張に通じるものがあった。

 野党は、小野寺氏に報告された時期に、ある「意図」を疑う。統幕が報告を受けた直後の3月2日、財務省の文書改ざんが報じられ、国会は改ざん問題一色になった。今回の日報問題は、公文書管理の観点では、まさに同じ。表面化すれば安倍政権への打撃は確実で、それを避けるため、佐川宣寿前国税庁長官への証人喚問終了後まで、報告を遅らせたと疑っている。

 さらに、通常国会では1~3月、18年度予算の審議が行われていた。「問題が明らかになれば、予算審議に影響する。予算成立のタイミングを考えたのではないか」との批判も。「時間稼ぎの隠蔽だ」との疑いは、ぬぐえていない。小野寺氏は文書を発見できなかったことを謝罪したが、野党は今後、小野寺氏の監督責任と、報告遅れの背景に政権の指示はなかったかも含め、安倍政権を追及する。【中山知子】