「紀州のドン・ファン」とも呼ばれた和歌山県田辺市の資産家で酒類販売会社社長野崎幸助さん(77)の死亡に絡み、和歌山県警は7日、5月上旬に急死した愛犬の死因などを調べるため、埋葬された自宅庭で死骸を掘り起こし、外部の専門機関に運んだ。急性覚醒剤中毒で死亡した野崎さんとの関連を捜査する。長年親交があるタレントのデヴィ夫人(78)は日刊スポーツの取材に応じ、愛犬を失った野崎さんから「もがき苦しみ、手をかまれた」と連絡を受けたことを明かした。

 謎に満ちた野崎さんの不審死が、新たな展開をみせた。7日午前8時ごろ、スコップを持った捜査員らが和歌山県田辺市の野崎さん宅へ入ると、庭の一部がブルーシートで覆われた。周辺では時折、何かを掘り起こすような音が響く。先月6日に死に、庭に埋葬された野崎さんの愛犬「イブ」の掘り起こし作業だった。

 作業には野崎さんの遺体の第1発見者で、55歳下の妻(22)も立ち会ったとみられる。県警は昼前に埋葬されたイブの死骸を発見。外部の専門機関に運んだ。県警の捜索は、計約5時間に及んだ。

 5月24日に急死した野崎さんの遺体からは多量の覚醒剤成分が検出され、死因は急性覚醒剤中毒だったことが分かっている。県警は愛犬の死因の特定を進め、野崎さんの死亡との関連を捜査する。

 野崎さんにとってイブは「家族同然」の存在だった。自著でも「目の中に入れても痛くない」とつづっていた。死んだのは野崎さんが亡くなる18日前だ。20年近くイブをかわいがってきた野崎さんは、今月11日には地元の有名旅館でイブのためにお別れ会を計画。親交のあるデヴィ夫人ら1000人近くを招待していた。

 イブもまた急死だった。デヴィ夫人はイブが死んだ後、野崎さんから直接連絡を受けたという。「大阪の親族の病院に連れていくとき(イブは)車の中で暴れて、もがき苦しんだ。七転八倒し、手をかじられたりして、手が傷だらけになったそうです」。野崎さんはかなり憔悴(しょうすい)していた様子だったという。

 デヴィ夫人は愛犬の死について、野崎さんから聞いた話として家政婦との言い争いについても証言した。「野崎さんは家政婦さんに『変なもの食わせたんじゃないか』と問いつめ、大げんかになったと話していました」。イブについて野崎さんは生前、「面倒をみてくれる人に遺産を相続してもらいたい」などとも語っていたという。イブを火葬せず、亡きがらをそのまま自宅の庭に埋めた野崎さん。殺人事件も視野に捜査を進める県警は、愛犬の死因特定が、野崎さんの不審死解明につながる可能性があるとみて調べている。

<「紀州のドン・ファン」死亡を巡る経過>

2月 野崎幸助さん55歳下の女性と3度目結婚

4月 「紀州のドン・ファン野望篇」発売。2人の出会いつづった著書第2弾

5月6日 愛犬イブ急死

 24日 野崎幸助さん急死。午後10時半、自宅寝室ソファで倒れているのを妻が発見

6月3日~和歌山県警が殺人として捜査

 5日 遺体に注射痕なしと判明。経口摂取の可能性

 6日 死因は急性覚醒剤中毒。死亡推定時刻は24日午後9時頃と発表。妻が都内から和歌山自宅に戻る

 7日 県警が愛犬イブ死骸を掘り起こす。専門機関で鑑定へ