千葉県松戸市のベトナム国籍の小学3年生レェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)が殺害された事件で強制わいせつ致死、殺人などの罪に問われた渋谷恭正被告(47)の裁判員裁判第9回公判が15日、千葉地裁(野原俊郎裁判長)で開かれた。リンさんの父レェ・アイン・ハオさん(35)は検察側の証人尋問で「弟のトゥ(4)は姉が亡くなったことを知らない。『どうして学校まだ戻ってこないですか』『どうしてご飯あげたのに残ってるですか』と聞いてきます。そして、『だれか殺したんですか』とも聞いてきた。私はどう答えたらいいですか」と、日本語で、声を絞り出すように話した。

 法廷内にはリンさんの母グエン・ティ・グエンさんのすすり泣く声が響き、傍聴人、裁判員らも数人が涙を流して証言を聞いた。渋谷被告は前を向いたまま、無表情だった。ハオさんは検察側尋問の最後に「本当に、裁判員の皆さんにはリンちゃんを殺した犯人に死刑判決を出してほしいです。お願いします」と頭を下げた。警察の捏造(ねつぞう)の可能性に言及し、無罪を主張する弁護側は質問しなかった。

 「全部ご飯食べましたか」「はい、食べました」。それが最後の会話になったこと。リンさんが将来、大好きな日本とベトナムの懸け橋になれる仕事を夢見て、勉強を頑張っていたこと。弟に優しい姉だったこと…。間近にいる渋谷被告に飛びかかりたい衝動を、両手の拳を強く握りしめて押さえ込み、ハオさんは法廷での証言をやり遂げた。裁判は18日、結審する。