サッカー・ワールドカップ(W杯)準々決勝で「王国ブラジルVSサムライ日本」が見たい! 人口約4万人の約1割をブラジル人が占め、「日本のブラジル」とも呼ばれる群馬県大泉町。町のレストランやバーでは、両国の試合ごとにパブリックビューイング(PV)が行われ、住民らが大きな声援を送ってきた。ともに苦しんでの1次リーグ突破だったが、日本が史上初の8強進出を果たせば直接対決が実現する可能性も。母国と第2の故郷の真剣勝負を、町民は心待ちにしている。

 群馬県の小さな町が沸いている。今大会のブラジルは、苦戦しつつも無事に1次リーグを1位突破。ブラジル系の住民にとって「第2の故郷」である日本も、2大会ぶりにベスト16に進出し、盛り上がりは最高潮に達している。

 ブラジル料理店「ブラジル」の店主で、日系3世の岩田ダニエルさん(33)によると、開幕以来、ブラジル人客の会話はW杯の話題ばかり。西野ジャパンに関するものも多いといい、「両チームとも次の試合に勝って、準々決勝で戦えれば最高だ」と期待した。

 ただ対決実現には、互いに難敵を突破する必要がある。日本の次戦の相手はFIFAランク3位の強豪ベルギー。日系3世の上原アキヨさん(46)は「ブラジルは勝つと思うけど、日本は厳しいかも。ただ韓国がドイツに勝っているしチャンスはある」。日本の8強入りには「『マイアミの奇跡』のような奇跡をもう1度、起こす必要がある」との声も上がった。

 一方で、「日本の勝敗よりも、まずはブラジルがメキシコに勝てるかどうか」と、母国の状態を不安視する声も多かった。ブラジル国籍の40代男性は「ネイマールの調子も悪い。メキシコ戦は厳しい戦いになる」と冷静に分析。同じくブラジル人のサルモンさんも「(メキシコに)勝つ確率は50%だ」と語った。

 スポーツバー「AX’E BAR(アシェ・バー)」では、ブラジルと日本の試合がある日はPVを行い、多い日は約50人が集まる。普段はブラジル人客ばかりだが、W杯期間中は日本人客も増え、大泉町の町長も店を訪れたという。日系2世のバーテンダー、園田ヒトミさん(53)は「この町では日本人がブラジル人を非常に良くしてくれる。対戦となったらブラジルを応援するけれど、両チームとも頑張ってほしい」と願っていた。【太田皐介】

 ◆大泉町 群馬県南東部にあり、1957年に小泉町と大川村が合併し誕生。面積約18平方キロは県内最小だが、SUBARU(スバル)などの工場を多く抱え北関東屈指の製造品出荷額を誇る。人口約4万2000人のうち2割弱が外国籍で、特に日系ブラジル人が多い。町内にはブラジル料理のレストランや商店が多く、「ブラジルタウン」として観光客らにも人気。村山俊明町長。