後半48分32秒のMF本田のコーナーキック(CK)は危機管理不足だった-。日本広報協会アドバイザーで千葉商科大名誉教授の藤江俊彦氏(72)はそう指摘した。そのわずか13秒後、決勝点をベルギーに許すが、この指摘は「たられば」ではなかった。

 相手は1次リーグ全32カ国中で最多9得点の攻撃力を持ちカウンターも得意だった。2-2、ロスタイム終了まで残り30秒という状況で藤江氏は「明らかに普段のCKとは違う状況で危機管理意識を持つべき場面だった」と指摘。しかし日本のセンターバック吉田と昌子は、普段通りに相手ゴール前に上がり、守備の要が自陣から消えた。本田はGKが簡単に捕れるボールを蹴り、相手がスムーズにカウンターに入れる状況を提供してしまった。

 1次リーグ・ポーランド戦では負けている状況で最後の10分、消極的なパスを回し、イエローカードの差で決勝T進出。世界から批判を浴びたが、覚悟を決め冷静な判断を下した。「戦略は立派だった。何でもかんでも『神風特攻』のようなことではダメ」と振り返る。ではなぜ、今回は正反対の対応だったのか。

 「『強豪から2点も取った』との意識が油断の原因だろう」と分析。太平洋戦争の日本軍を例に「序盤は連戦連勝で『いける』と油断し、結果的に敗戦した」と説明。さらに「1960年ごろまで日本には『安全管理』という考えはあったが『危機管理』はあまりなかった。日本人は有事が起きてから対応すればいいと考える傾向が今もある。それではあらゆる状況を想定できない」と語った。

 企業の危機管理対策にも携わってきた藤江氏は、ビジネス界もスポーツ界も同じ事が言えるという。「ビジネス界は『取引』の中で、相手がどのように出て来るか見極める。瞬間、瞬間どのような方向性で出て来るか分からないので、グローバル社会では、そのマネジメントをしっかりしないと商売にならない。国、人種と世界を広く見て戦術を研究しないと立ちゆかない。スポーツも同じだと思う」。

 日本の次期監督についても同様にグローバル社会に対応できる人材が好ましいという。「日本人、外国人どちらでも良いと思うが、日本選手との考え方が共通している人が良いのでは。もちろん日本語を勉強する姿勢を持っている人。それで信頼関係が生まれる」。

 今回、日本を撃破したベルギーを訪問したことがあり、彼らの強みも指摘した。「オランダ語、フランス語、ドイツ語、3言語を話す国民が一致団結して1つのチームになっている。その連携力はすごい。これを目指さないと」と語った。

 大阪・北野高サッカー部だった藤江氏は午前3時から生放送で観戦。「一瞬の隙はあったが、2点を取って全力を出し切った」と日本をたたえた。一方で「徳川家康公は『百里の道は九十九里をもって半ばとすべし』と言った。天下を取る人はこういうことを知っている」と日本サッカー界に格言を送った。【三須一紀】