地下鉄、松本両サリン事件などオウム真理教による事件に関わったとして、殺人などの罪に問われ、死刑が確定した教団元幹部ら6人の刑が26日、執行された。

 今月6日、松本智津夫元死刑囚(教祖名麻原彰晃)を含む7人の刑が執行されたばかり。教団に関する事件で死刑が確定した13人全員の執行が異例の速さで終わり、平成を代表する未曽有の凶行となった事件は、大きな節目を迎えた。上川陽子法相が2度の法相在任中に命じた執行は計16人となり、現行制度では最多。

 刑が執行されたのは、林(現姓小池)泰男(60)=仙台拘置支所、豊田亨(50)、広瀬健一(54)、端本悟(51)=いずれも東京拘置所、岡崎(現姓宮前)一明(57)、横山真人(54)=いずれも名古屋拘置所=の各死刑囚。6日に松本元死刑囚ら7人の刑が執行されてから、わずか20日。2日前の24日に執行命令を出した上川法相は、会見で「死刑は人の命を絶つ、極めて重大な刑罰。慎重な検討を重ねた上で命令した」と、硬い表情で述べた。

 執行の公表が始まった98年11月以降、同じ月に複数回執行されたのは初めて。上川氏は「命を奪われた被害者やご遺族、一命を取り留めた方々の恐怖、苦しみ、悲しみは想像を絶する」と、淡々とした口調ながら語気を強めて非難した。

 来年、元号が変わることを受け、政府は平成の世で起きた一連のオウム事件について、「平成のうちの解決」を検討。7人の執行から時間を置かずに6人の執行に踏み切り、異例の短期間で13人の執行を終えた。上川氏が2度の法相在任中に命じた執行は計16人で、一時的に中断していた死刑が再開された93年以降、法相として最多だ。ただ上川氏は、国民世論の支持に触れ「凶悪な罪を犯した者に科すことはやむを得ない」とも述べた。

 6日執行の7人は、教祖や、国家を模した省庁制を敷いた教団内で大臣や長官を名乗り、26日執行の6人より教団内の地位が高い。法務省はこうした事情や、執行に当たる刑務官の負担、国際的な批判を考慮し、執行順を決めたようだ。

 教団による一連の事件の裁判は今年1月に終結。192人が起訴され、死刑13人、無期懲役6人、実刑81人、執行猶予付き懲役刑87人、罰金刑3人、無罪2人の判決が確定した。ただ、司法的な手続きは終わっても、被害者や遺族への賠償や風化防止など、事件の課題は今も残ったままだ。一方、松本元死刑囚の遺骨の受け取りをめぐっても、元死刑囚が受取人に指定したとされる四女と、引き渡しを求める妻や三女らとの間で調整がついていない。

 オウム事件の「幕」が、降りたわけではない。今後不測の事態も予想され、公安当局は、教団の後継団体への警戒を強化している。