東京・渋谷駅南側に13日、大型複合施設「渋谷ストリーム」がオープンする。東急グループが進める渋谷駅周辺開発の一環で、駅直結の地上35階、地下4階のビルに、レストラン、オフィス、ホテル、大型ホールなどが入る。「クリエーティブワーカーの聖地」がコンセプトで、グーグル日本法人の本社オフィスも入居する。

90年代後半から00年代にかけて渋谷は「ビットバレー」と呼ばれ、IT系企業が集結していた。ビットバレーとは米国のシリコンバレーをもじった造語で、「bitter(渋い)」と「valley(谷)」を合わせたとされる。しかし、大型オフィスの不足などで、近年は渋谷を離れる企業も目立っていた。

13日にオープンする「渋谷ストリーム」は、ビットバレーの輝きをもう1度取り戻し、さらに加速させるために誕生した大型複合施設だ。渋谷エリア最大級のオフィスに加え、最大700人収容のホール、ホテル、約30店舗のレストラン、カフェなどを併設。自転車通勤のワーカーをサポートするための「サイクルカフェ」も設けられている。

先日会見した東急電鉄の高橋和夫社長は「渋谷ストリームは、ビジネス、文化など渋谷らしい新しいクリエーティビティーを発信するためのステージです。ストリーム(流れ)の名の通り、次の時代への流れをここから生み出していきたい」と話した。

グーグル日本法人本社オフィスも来年、六本木ヒルズから移転することが決まっている。同法人は01年の創業当初から10年まで渋谷のセルリアンタワーに入居していた。9年ぶりの“原点回帰”となる。

場所は渋谷駅の南側で、旧東急東横線渋谷駅のホーム、線路跡地とその周辺地区を再開発した。東横線渋谷駅の名物だった「かまぼこ屋根」をイメージしたオブジェなども飾られている。

渋谷ストリームの正面を流れる渋谷川沿いに約600メートルの遊歩道や広場を設け、憩いの場所とした。かつては水質が悪かった渋谷川だが、東京都の事業によって清流が復活した。今回のプロジェクトでは「壁泉」として、清流が噴水のように堤防を流れ落ちる。

遊歩道脇にはカフェやレストラン、レモネード専門店などが軒を連ね、テラスで味わうことができる。渋谷駅南側は国道246号で分断されているが、この遊歩道が新たな観光スポットとなり、渋谷から代官山方面に向かう人も増えそうだ。「街の利便性や回遊性を向上し、訪れる人たちに楽しさを体感していただきたい」(高橋社長)。

渋谷駅周辺開発で次々と新たな施設が誕生し、渋谷が生まれ変わりつつある。高橋社長は「混沌(こんとん)としてゴジャゴジャしているのも渋谷の魅力。そういうものを併せ持った多様性のある街にしたい」と話した。【田口辰男】