安倍晋三首相(64)は2日、第4次安倍改造内閣を発足させた。

3選された自民党総裁選で支持を受けた主要派閥から、たまりにたまった「大臣待機組」を大量登用。12人が初入閣し、60代以上のベテランが9人。論功行賞による「在庫整理」の顔ぶれだが、首相は「いぶし銀の人材」として「全員野球内閣」と命名したが、チームプレーの行方は不透明だ。女性閣僚は片山さつき地方創生担当相(59)だけ。地味すぎる布陣に、来年の参院選前の「再改造」の見方も出ている。

安倍首相は2日夕、官邸で会見し、改造の背景を説明。「適材適所の考えのもと、12人が初入閣。それぞれのポジションで腕を磨いてきた」と述べ、「明日の時代を切り開くための全員野球内閣だ」と命名した。「未来チャレンジ」「仕事人」とこだわってきた過去の命名に比べると、党内融和への思いがにじんだ。

今回の改造の大きな特徴が、この初入閣12人だ。安倍内閣で最多。60代以上は9人で、衆院当選7~8回組も多い。多くが長年、大臣ポストの「待望組」と呼ばれ続けた。総裁選で首相を支持した細田派、麻生派、二階派、岸田派、自主投票だった竹下派からも登用。「冷や飯」が確実視された石破派から若手実務派、山下貴司氏を法相に起用した以外、基本的には総裁選支援への見返り。強固な「1強」から、足元が揺らぎ始める中、派閥の不満を招かないよう腐心した「論功行賞」の側面が強い。

「土台」と評した菅義偉官房長官や麻生太郎財務相などは続投。初入閣組の大量投入でも内閣は揺るがないと自負も見えるが、初入閣組の経験不足や国会答弁を不安視する向きもある。

過去の改造で「目玉」でもあった女性は、片山さつき地方創生相だけ。会見では、首相は、女性の外国人記者に「今の時代を考えると少ない」と指摘され、「各国と比べて女性の比率が少ないのは、認めざるを得ない。日本は女性活躍がまさにスタートしたばかり。どんどん(今後)人材が育ってくる」と、女性議員の人材不足を嘆くような発言も。片山氏には「2人分、3人分の仕事をしてほしい」と求めた。

対照的に党4役は信頼する顔ぶれをそろえた。再任の二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長に加え、最側近の加藤勝信総務会長、盟友の甘利明・選挙対策委員長。首相は今月下旬召集の臨時国会への憲法改正案提出へ、自民党内の調整を目指す。「主戦場」となる党側の土台固めも意識したとみられる。甘利氏の就任会見では、政治とカネの問題で経済再生担当相を辞任したことへの質問も。甘利氏は東京地検特捜部の捜査で不起訴になったとして、問題ないとの認識を訴えた。

最後の総裁任期に入った首相。過去の改造で示したサプライズや大抜てきといったギャンブルは避け、守りに徹した。あまりにも地味な内閣で、来年の統一地方選と参院選の間の「再改造」まで、早くもささやかれている。【中山知子】