「飲んだ勢い」の代償は、重かった。10月28日未明、ハロウィーン直前の週末で狂乱状態となった東京・渋谷のセンター街で軽トラックが横転させられた事件で、警視庁は5日、暴力行為法違反(集団的器物損壊)の疑いで、とび職や美容師ら20代の男4人を逮捕した。当時はコスプレ姿の若者ら約4万人が渋谷に繰り出していたが、警視庁は防犯カメラや居合わせた人の撮影した画像を解析、容疑者を特定した。
逮捕されたのは、とび職の黒木裕太(27)、土建業の川村崇彰(22)、会社員の糀原翔大(20)と美容師の国分陸央(20)の各容疑者。警視庁によると国分容疑者は「わくわくしてやった」、川村容疑者は「酒を飲んだ勢いでノリでやった」と、全員が容疑を認めている。4人に面識はなかったという。
警視庁は他にフランス人やベルギー人を含む計15人が事件に関与したとみて、逮捕の4人以外に10人の身元を特定。さらに1人の捜査を進めており、同容疑で今後書類送検する方針。特定できた10人は事実を認めているという。逮捕した4人は、軽トラックを横転させた上、車体に乗って壊すなど悪質性が特に高いと判断した。
逮捕容疑は10月28日午前1時ごろ、渋谷区宇田川町の路上で、軽トラックを横転させ、損壊した疑い。周辺の約250台の防犯カメラや現場に居合わせた人の撮影した画像の解析、聞き込みから身元を割り出した。ネットでは、上半身裸になった人物らが軽トラックに乗ったり、大勢で囲んで倒したりするシーンが拡散されていた。横転の際に、車体の一部が破損。運転手の男性は通報しようと車内から逃げ出しており、けが人はいなかった。男性が渋谷署に被害届を出していた。
東京・原宿にある国分容疑者が勤める美容院は、逮捕を受け、「今日、聞いたばかりで…」と困惑。最近も変わった様子はなく、ハロウィーンに行った話もしていなかったという。事件前後の時間帯には、群衆を取り締まる警察を撮影した動画にリツイートしていた。一方、糀原容疑者の勤務先も逮捕当日に事態を把握。事件2日後の10月30日には、電気工事の技能大会に出場していたという。
渋谷区の広報課は「警察の方で厳正な対処をされると思いますので、区としては今後に向けて対応していく」とコメント。警視庁や区などは、再び若者が大勢集まる大みそかの年越しカウントダウンでも、厳重な警戒を続ける。
<今年の「渋谷ハロウィーン」>
警視庁が厳重警備態勢を取る中、女性を殴ったとしてアメリカンフットボールXリーグの米国籍男性選手(25)が暴行容疑で現行犯逮捕されたほか、女性に対する痴漢や盗撮などの被害が続出。渋谷署によると、10月27日夜から11月1日朝にかけ、痴漢や窃盗の容疑で計19人が逮捕された。その後、渋谷区の長谷部健区長は「一部の人たちにより、残念なハロウィーンになってしまった」として、代々木公園使用案や有料制イベント案に言及。対策会議を発足させる意向を示した。