今年の国会論戦は、安倍晋三首相や閣僚らによる、はぐらかしや「論点ずらし」の手法が目立った1年だった。質問に正面から答えず自身の主張を繰り返し、ついには質問を完全無視する大臣まで登場。政権の「説明力」に、焦点が当たった。政権の巧妙な論点ずらしをご飯の食べ方にたとえ、「ご飯論法」の言葉が世に出るきっかけをつくった法大キャリアデザイン学部の上西充子(みつこ)教授に、話を聞いた。主な一問一答は以下の通り。

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-安倍政権の「論法」について、以前から違和感を感じていたのですか

上西氏 話題になったものを断片的に聞いていて、「そんないいかげんなもので(法案を)通してはまずい」とは思っていましたが、国会審議そのものを、最初から最後まで見たのは、働き方改革法案だけです。

やりとりをきいているうちに、単に大臣の個人的資質ではなく、組織ぐるみ(の論点ずらし)ではないかと感じた。単に話をはぐらかすだけはなく、いかにはぐらかすか戦略的に練られていると思います。

(※編注 高度プロフェッショナル制度のヒアリングに関し、当時の加藤勝信厚労相は「私もいろいろお話を聞く中で、その方は(略)そういった働き方をつくってほしいと要望をいただいた」と答弁した)

上西氏 いかにも高プロへの要望があったように聞こえますが、その後、研究職の人に自分では話を聞いていないことが分かります。それを指摘されると、把握はしていたとか、『直接話を聞いたとは言っていない』という風に開き直る。

労働者が求めているから(制度を)つくる、という形に合わせるためのアリバイをつくり、ばれそうになると「これは公表を前提で聞いたものではない」というふうに、ごまかそうとする。労働者は(高プロを)求めていないと問われると、経団連の要望で、連合の会長にも同意をいただいたと。国会審議の全体流れを追っていると、最後にひっくり返して開き直ったように感じました。

その経験から、丹念に流れを追い、指摘する人がいないといけないと思います。(報道では)分かりやすいところだけが取り上げられやすい。外務大臣のように「次の質問どうぞ」なら分かりやすいですが、働き方改革の高プロは、巧妙(な流れ)になっていた。巧妙であることはそれだけ、あくどいということです。

-野党が、重箱の隅をつつくように質問すれば、国民に伝わりますか

上西氏 うまく伝わったのが、改正入管難民法の審議で浮き彫りになった、外国人技能実習生への調査票の問題ではないでしょうか。私たちが目を向けてこなかった技能実習生の劣悪な処遇も、分かりました。それにもかかわらず、政権は技能実習生とは制度が違うと、法案を通しましたが。

ただ、高プロの審議時よりも、世間の目は「これはだめだ」と変わってきているのではないでしょうか。(2に続く)