今年4月30日、天皇陛下の退位に伴い、平成の時代に幕が下りる。日刊スポーツでは、平成の世を振り返る社会面連載企画「さよなら平成」の新春特集を3回にわたってお届けします。第1回は、小沢一郎自由党共同代表(76)のインタビュー。1993年(平5)、小沢氏らの自民党離党を機に55年体制が崩れ、平成の日本政治は大きく動き始めた。2度の政権交代に関わった小沢氏は、「平成は次の時代への過渡期だった」と振り返り、新しい御代(みよ)で、3度目の政権交代は「できる」と力を込めた。【聞き手=中嶋文明、中山知子】
-小沢さんの自民党離党を機に、平成の日本政治は大きく変わりました
小沢氏 常に政権交代の可能性がある、国民が政権を選ぶことができる、そういう議会制民主主義を、日本に定着させないといけない。これは政治家になった当初からの私の目標です。それまでは、ほぼ半世紀、自民党中心の保守系の政権が続きました。近代民主主義国家では起こりえない現象で、日本にも本当の民主主義を定着させないといけないという思いで、あえて自民党を離党しました。
その後、細川政権、民主党政権と2度、自民党政権を倒して野党政権をつくりました。残念ながら、期間が短かったというだけではなく、政権交代可能な議会制民主主義の定着という面からいうと、まだほど遠い状況です。私の思い描いたようなテンポでは進んでいませんが、考えてみれば、自民党の1党政権が半世紀続いた中で、すぐに変えることは無理な話です。日本で、わずか30年の間に2度政権を交代させたということをもって、平成は、それなりに意義のあった時代だと思っています。
-平成をどう振り返りますか
小沢氏 次の時代へのプロセス、過渡期だったと思います。細川政権は8カ月、民主党政権は3年3カ月でしたが、国民の頭の中に、自分たちの1票で政権を代えることできるという意識が、確実に植えつけられたと思います。その後、野党がバラバラになり、約70%の有権者が投票した09年の選挙と比べると、その後の3回は約50%の投票率という状態でした。2000万人が投票所に足を運ばなかったことになります。国民の皆さんには、自分たちの手で新しい民主主義の時代をつくるという思いをもう1度強く持っていただきたい。
新しい御代が始まると、すぐに参院選があります。衆参ダブル選挙も十分に可能性があると思います。そこで何とか、3度目の政権交代への道筋をつけたいと思っています。
-細川政権、民主党政権が短期間に終わったのは、なぜでしょうか
小沢氏 細川さんの辞任について直接的な原因は、私にも分かりません。ひとえに、細川さんの個人的な理由だったのではないでしょうか。民主党政権は、初めて本格的な政権を取ることができたわけですから、もう少し勉強して自分自身を磨き、政権運営を行えばよかったと思います。
-小沢さんが主導した小選挙区制の導入は正しかったと考えますか
小沢氏 小選挙区制だったから政権交代ができたのです。中選挙区制では絶対にできません。いわゆる「死に票」が多く出るという意味でマイナス面はありますが、政権をその都度、国民の意思で代えられるという意味ではいちばん勝(まさ)っていると思います。
-30年の間、さまざまな党をつくってきました。「壊し屋」といわれることに思うところはありますか
小沢氏 私の目標はただ1つ。この国に議会制民主主義を定着させることです。その筋道を通すため、実現するためにはどうすればいいか。この1点で私はこれまで政治行動をしてきました。結果として党が変わったことはそのとおりですが、いつの世も新しい時代は、古い時代を壊さないとつくることができません。明治維新も、旧徳川幕藩体制を壊さないとできませんでした。アンシャンレジーム(旧体制)を壊さないと新しい体制ができないのは、当たり前のことです。
-自由党と国民民主党の「合流」論もあります。野党結集は広がりますか
小沢氏 立憲民主党の枝野幸男代表が「OK」と言えば、みんなが1つになれると思います。党の合併がだめなら、党を解散して入ることも構いません。いろいろと問題があってもウイングを広げないと、過半数の票は取れません。自民党は、中で勝手なことを言っていても、権力のもとでは1つになっています。私はよく、自民党のあの「したたかさ」を見習うように言っています。
-権力への執念ですか
小沢氏 「権力を取る」ことは、悪いイメージでとらえられることが多いですが、国民に訴えていることを実行するために、権力の奪取が必要なのは当然のことです。
-今後の活動について
小沢氏 もう1度、政権交代ができれば、国民自身が「自分たちの力でまた政権をつくることができた。これが民主主義だ」と意識できると思います。矛盾を抱えながらも権力に執着していた自民党は、政権交代が続くと、いっときの間、バラバラになるでしょう。私は「自民党がいらない」と言っているのではありませんが、今のいいかげんさを少したたき直した方がいい。新しい自民党ができて、その間に野党も政権、政治とは何かを学び、きちんとした政党になることで、ちょうどいい2大政党になるのではないでしょうか。
-政権交代はできますか
小沢氏 できます。もう1度、政権交代を実現したら、次の世代にたいまつを引き継ぎたいと思います。