東京地裁が、私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたとして、会社法違反(特別背任)などで起訴された前会長カルロス・ゴーン被告(64)の保釈を認める決定をし、東京地検の準抗告を棄却してから一夜明けた6日、東京・小菅の東京拘置所には、午前9時の段階で報道陣が約160人集結した。

駐車場の手前に設けられた報道陣臨時待機場所には、フランスをはじめとした欧米メディアに加え、ロシアのメディアも柵の手前に陣取るなど、ゴーン被告の保釈に世界中の関心が寄せられていることを物語った。

ゴーン被告は、18年11月19日に金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、同12月21日には、08年に資産管理会社と新生銀行との間で「スワップ取引」を契約した中、リーマン・ショックの影響で損失が生じ、契約者を日産に変更し、約18億5000万円の評価損を付け替えた、特別背任容疑で再逮捕された。

1月8日には東京地裁で勾留理由開示手続きが開かれ、勾留の取り消し手続きが行われたが、同11日には東京地検特捜部が会社法違反に加え、処分保留だった有価証券報告書の役員報酬過少記載容疑についても、金融商品取引法違反容疑で追起訴。それを受けて同日、弁護人が保釈を請求したが認められなかった。同18日にも2度目の保釈を請求したが却下された。

2月13日に、それまで弁護を担当した元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士が辞任し、代わって弘中惇一郎弁護士(73)が弁護人に就任。同弁護士は同28日に3度目の保釈を請求。過去2度の保釈請求では、米当局が保釈中の被告らの逃亡防止に使う装置の装着などを提示したが、認められず、弘中弁護士は「不自由かもしれないが、説得力ある申請」(同氏)を、地裁に提出。<1>国内に住み、住居の出入り口に監視カメラを設置<2>パスポートは弁護人が管理し、海外渡航禁止<3>日産幹部らとの接触禁止<4>日産の取締役会に出席するときは裁判所の許可を得る<5>パソコンや携帯電話の使用制限などを提案した。カメラは終日録画し、映像は定期的に地裁へ提出。携帯電話にメール機能は付けず、弁護人としか通話できない。パソコンを使う際は、平日の日中に弁護人の事務所に行くとの条件も。ゴーン被告は嫌そうな顔をしたが、弁護人の説得を受けて納得したという。

18年11月19日の逮捕から、勾留が107日を数えるゴーン被告。長期勾留を続ける日本の司法に対し“人質司法”などと海外のメディアから批判が高まる中、ゴーン被告が東京拘置所から保釈されるのか…世界の目が注がれている。