08年北京五輪(オリンピック)の開会式に登場した「笑顔の傘」にかかわった、アートディレクター水谷孝次氏率いるNPO法人「MERRY PROJECT」は9日、東京都港区の増上寺で、東日本大震災で被災した子どもたちの笑顔をあしらった傘を開いた。

水谷氏やスタッフは震災後、定期的に被災地に入り、支援を続けてきた。傘になった子どもたちの写真は、福島県などで出会った子どもたちの笑顔。20年東京オリンピック・パラリンピックは、震災からの「復興五輪」の理念が掲げられている。水谷氏は「東北のことを忘れることはない。心の復興を、笑顔の復興にもつなげていきたい。2020の先に向かっても、やっていくべきことではないか」と話した。

これに合わせて、大会までまもなく500日を迎えるのを前に、多様な立場の人が歌やダンス、アートをともに楽しむイベント「MERRY SMILE MINATO」(港区の大会応援プログラム推進事業)も開催。忌野清志郎さんとも共演したバリアフリーロックバンド、「サルサガムテープ」によるさまざまなステージや、笑顔をテーマにしたダンス大会などを、多くの参加者が楽しんだ。

水谷氏はかねて、「20年東京オリンピック・パラリンピックは、『未来の世界はこうあるべき』という価値観を提言する場にしてほしい」と提案。「私はエコ、サスティナブル(持続可能性)、メリー(笑顔)が鍵を握ると思う。東京から、新しい価値観を世界に発信するチャンスにしてほしい」と訴えてきた。

この日も「いろんな個性が集えば、笑顔の力に変えられる。2020大会を機に、みんながつながり合えるアクションが、社会でも起きてほしい」と期待を示した。「我々の活動は草の根で小さな1歩だが、世界に向けて発信していきたい」と話した。  【中山知子】