4月1日に日本囲碁史上最年少の10歳0カ月30日で初段になる仲邑菫さん(10)が26日、囲碁ナショナルチームの新メンバーに育成選手として加わった。同日、都内の日本棋院東京本院で行われた会見で発表された。菫さんは合同表彰式で授与された新入段者免状を手に「世界で戦える棋士になりたいです」と目標を語った。

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菫さんは壇上であいさつを促されると「新初段の仲邑菫です」と答えた。小さな声ながら自覚がにじんだ。質疑応答では「プロになって楽しみにしていること」を聞かれ答えに窮したが、自らの強みは「戦うところ」、強化すべきポイントは「寄せ」と分析した。

表彰式後には、日本棋院が世界2強の中国、韓国に対抗するため5年前に立ち上げたナショナルチームに、育成選手として加入することも発表された。ナショナルチームは夏、冬に1週間ずつ合宿を行うほか若手は研究会、育成リーグで強化に取り組む。育成選手には男性棋士は18歳、女性棋士は20歳以下が選ばれ、昨年11月の名人戦で井山裕太五冠を下し、今月の第3回ワールド碁チャンピオンシップにも参戦した張栩(チョウ・ウ)ヘッドコーチら世界で戦うトップ棋士の指導を受けることが出来る。

7歳から韓国で修業する菫さんは、1月に韓国で女流棋士世界2強の崔精(チェ・ジヨン)九段と、9歳7カ月5日の世界最年少でプロ入りした■(■は十の下に日を二つ縦に並べ、十の縦棒が一つ目の日を貫く)薫鉉(チョ・フンヒョン)九段、東京で台湾の黒嘉嘉(コク・カカ)七段と対局。3連敗も世界の強豪と真っ向から戦った。採用試験で対局した張栩名人は「9歳で、この強さは驚いた。プロの世界である程度通用する」と高評価。コーチを務める平田智也七段も「部分的な読みは高い水準。世界トップとの対局中も物おじせず勝負師向き」と期待した。

菫さんが好きな棋士を聞かれ「井山先生」と即答した井山裕太五冠(29)も、第3回ワールド碁チャンピオンシップでは、準決勝で準優勝した中国の柯潔(カ・ケツ)九段相手に優勢に戦いながらも中盤に逆転を許し敗退。コーチから監督に昇格した高尾紳路九段は「世界で戦えるのは井山5冠1人。どうやったら、あのように強くなるか考えて欲しい」と呼び掛けた。そして菫さんに「子供の頃から世界で勉強しているのは国際戦の大きなアドバンテージ」と期待を寄せた。【村上幸将】

 

◆菫さんの父信也九段(45)は、ナショナルチーム入りについて「光栄。トップの先生に教えていただく機会はなかなかない。ありがたい環境」と笑みを浮かべた。菫さんはプロ入り内定後も修業で韓国に足を運んでいる。4月にも棋戦でのデビューが予定される中、今後も修業を続けるかについて、信也九段は「決まっていません」と答えた。菫さんが質疑応答中、答えに窮したことにも触れ「(流ちょうな受け答えは)あと何年か待って下さい」と苦笑した。