塚田一郎前国交副大臣が、安倍晋三首相の地元下関市と、麻生太郎財務相の地元に近い北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の整備をめぐり、首相らに「忖度(そんたく)した」と発言した問題に関連し、16年3月に石井啓一国交相に提出された道路建設の早期実現を望む要望書に、首相の名前が要望者の1人として記されていたことが8日、分かった。

首相の名前は、下関や北九州に縁のある議員有志でつくる「関門会」の1人として記載されている。その会が提出に先立つ同年2月24日に、首相を囲んだ懇親会を実施した際、この道路のことが話題にあがり、「関門会の総意として要請活動を行うことになった」としている。首相にも、要請を行うことへの認識があったと受け取れる内容だ。

要望書に「強く要望する」とされた内容としては、<1>下関北九州道路の早期実現を図ること<2>実現に向けて、具体的な検討を進め、調査を実施するとともに、これらに必要な予算な予算を確認すること、としている。

8日に国会内で行われた野党合同ヒアリングでは、「現職の総理が、自分で任命した国交相に地元の公共事業を要望した例が過去にあるのか」と、首相の名前が要望者の1人として記されたことに、出席者から疑問が相次いだ。「普通はやらないはずだ」と指摘された国交省の担当者は、「調べたい」と述べるにとどめた。

首相は4日の参院決算委員会で、共産党の仁比聡平氏にこの文書について問われ、「(首相が)忖度させたのか」と追及された際、「要望書のことは、今拝見するまで知らなかった」とした上で、「首相として陳情する立場にはない」と述べていた。

同道路は地元で「安倍・麻生道路」と呼ばれ、08年に当時の福田政権が財政難から国の調査を凍結。熊本地震後の17年度、調査の補助金が復活し、現在は国の「直轄調査」に引き上げられ、19年度予算に約4000万円が計上された。

塚田氏は今月1日の会合で、「私は忖度します。国直轄の調査に引き上げました」などと、直轄調査への引き上げを自身の手柄であるかのように主張していた。