東京・恵比寿の路上に18日、約1万匹もの大量のミツバチが現れる騒動があった。世田谷区で養蜂の研究所を営む養蜂家の長島房子さんが、都から要請を受けて現場に急行し、新たな巣箱を用意してミツバチを回収した。

現場はJR恵比寿駅東口から徒歩3分くらいの距離のバス通りに面した場所で、周辺には飲食店やコンビニエンスストアが立ち並び、恵比寿駅に向かう人が途切れることはない。長島さんによると、この日午前10時頃、都の農林水産部農業振興課から「ミツバチが飛んでいるという通報があるから、見て下さい」と連絡があり、現場に急行し、ハチを確保したという。「人通りがある中、ハチが飛んでいたので、どうにかおとなしくさせなきゃいけないな」と思ったという。

ハチはピーク時に1万匹くらい飛んでいたとみられているが、長島さんは「そんなに、多くない」と感じたという。ハチをおびき寄せることが出来るよう、蜜の入った枠を仕込んだ箱を約1時間、設置して無事に回収。「思ったよりも入ってくれて(飛んでいる数が)少なくなった。通行人の方に迷惑をかけることはなかったと思う程度になった。大丈夫」(長島さん)と事なきを得た。

都の農林水産部農業振興課の担当者によると、ミツバチはおとなしい習性で、よほど脅威を感じない限り、人を刺すことは、まずないという。長島さんも「ミツバチが殺されては、かわいそう。本来は刺さないですけど、習性を知らない人が『キャー』などと騒ぎ立てることで、ビックリして万が一、刺すということがないように、と思っていたので(大きな被害がなくて)良かった」と胸をなで下ろした。取材に殺到したテレビ各社の中で、撮影クルーが1人、刺された以外は、大きな被害はなかったという。

現場に現れたハチは、養蜂家がハチミツを採取するために育てる西洋ミツバチで、どこから現れたかなど原因は不明だが家畜の可能性が極めて高いという。ミツバチにとって、この時期は新しい女王蜂が生まれるタイミングで、それを受けて母親に当たる古い女王蜂が巣を出て新たな巣を作る「分蜂(ぶんぽう)」の習性がある。ミツバチがどこから飛んできたかなど原因は明らかになっていないが、長島さんは家畜のミツバチが分蜂し、表に出てきたため、発生した可能性があるとみている。「養蜂家は、分蜂の時期に新たな女王蜂の卵を見つけたら、新しい巣箱を用意してあげるか、卵が生まれないようにカットするものなので、卵を見落としたのか…」と見解を語った。

長島さんが箱を引き上げた午後も、現場周辺にはハチが飛んでいた。長島さんは「群れから離れた迷いバチが(現場に残っている)女王蜂のフェロモンに引き寄せられて集まっているのでは?」と分析した。【村上幸将】