夏の参院選の前哨戦となる衆院大阪12区、沖縄3区の両補欠選挙(21日投開票)は20日、選挙戦最終日をを迎えた。安倍晋三首相(64)は大阪12区の党公認候補を応援するため大阪入り。異例とも言える3カ所での街頭演説に臨んだ。大阪府寝屋川市内の演説には森友学園前理事長の籠池泰典被告(66=詐欺などの罪で公判中)が姿を見せ、“籠池劇場”を展開した。安倍首相は演説後、大阪市内の笑いの殿堂「なんばグランド花月(NGK)」で吉本新喜劇に飛び入り出演した。

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京阪電鉄寝屋川市駅前での街頭演説。安倍首相が登場すると、聴衆から大きな歓声が上がった。1つの選挙区では異例の3カ所目の応援演説。自民党新人の北川晋平氏(32)の手を持ち上げると、経済政策「アベノミクス」の成果を強調した。

「経済を成長させ、税収を子育て世代に振り向けてきた」。大阪12区は4人が争う大混戦。2補選の結果は安倍首相の政権運営に影響を与えるだけに、2敗はできない。大阪12区には大阪ダブル選を完勝し、勢いに乗る維新が新人の藤田文武氏(38)を擁立。リードを保っている。

大阪ダブル選は静観していた安倍首相だが、党からの要請を受けて重い腰を上げ、大阪入りした。対抗する維新については演説では一言も触れず、これまでの実績を強調した。

寝屋川市駅前の演説には籠池夫妻が姿を見せた。街宣車の上に立った安倍首相からバス停を挟んで約20メートルの距離に、2人が陣取った。2人の前には自民党関係者が立ちはだかり、安倍首相からの“視線”を徹底ガード。演説が始まると、諄子被告は「ウソや~! ウソつきや!」と何度も大声を張り上げた。

「あと10日ほどで新しい時代、令和が始まる」と安倍首相が聴衆に訴えると、籠池被告は大きく首を振り、眉間にしわを寄せた。周辺には「森友問題」のプラカードなどを持った人も集まり、首相演説の終盤には「安倍、帰れ」コールもわき起こった。

演説が終了後、籠池被告は「令和? あれはやっぱり『命令』の『令』なんですよ。すがすがしいとかは後でこじつけたもの。とんでもない暦を入れたもんだ」とバッサリ。徹底ガードには「これも命令があってのものでしょう」と吐き捨てるように言った。“籠池劇場”をやり過ごした安倍首相は、NGKへ移動。吉本新喜劇に飛び入り出演し、新喜劇の定番「ズッコケ芸」は封印したが、笑いをとった。【松浦隆司】