令和のヒロインへ-。囲碁の最年少プロ、仲邑菫(なかむら・すみれ)初段(10)が22日、公式戦デビューした。大阪市の日本棋院関西総本部で打たれた第29期竜星戦予選で、同じく4月にプロ入りした大森らん初段(16)と対戦。プロ初戦を白星で飾ることはできなかったが、「超のつく負けず嫌い」は将棋の最年少プロ藤井聡太七段(16)と同じ。「世界一」を目指す10歳の少女が、大きな夢への第1歩を踏み出した。

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最終盤、仲邑は背筋を伸ばし、全力で考えた。逆転の一手はないか…。口元をゆがめながら、鋭い視線を碁盤へ注ぐ。プロ初対局。ドイツを含め40社約100人の報道陣が詰めかける中、最後は小学5年生の少女が悔しそうに「プロ初黒星」を認めた。

終局後、少し落ち込んだ様子で「緊張してあまりうまく打てなかった。悔しいです。後半がうまくいかなかった」と話した。対局は持ち時間各1時間の早碁で打たれた。先番の仲邑は一時、優勢だったが、中盤のミスが響き、大森に主導権を渡した。

プロ棋士の信也九段(46)と元囲碁インストラクターの幸(みゆき)さん(38)のひとりっ子。幸さんの妹・辰己茜三段も棋士という囲碁一家で育った。囲碁を始めたのはちょうど3歳のとき。幸さんから囲碁を教わると、驚異的なスピードでルールを覚え、3カ月で完全マスター。毎日7~9時間を囲碁の勉強に費やした。

叔母の辰己は、仲邑が3歳4カ月のとき、初めて碁を打った。そのときのことを「衝撃でした」と話す。「3歳半にもなってなかったのに、ルールは完璧に分かっていた。石とりだけができるならまだしも、陣地もわかっていた。最後、終局して数えるところまでできた。そこまでできる子はみたことがなかった」。

仲邑は日本棋院が世界戦で活躍できる棋士を育てるために新設した「英才棋士枠」でプロ入り。新時代の期待の星だ。終局後、目標を尋ねられると「世界で戦いたい」と力強く宣言。令和のヒロインへ、10歳の少女がスタートを切った。【松浦隆司】