安倍首相とトランプ大統領は27日の首脳会談で、懸案となっている日米貿易交渉の早期妥結へ、協議を加速させる方針で一致した。会談は当初1時間の予定が2倍の2時間に及び、その後の日程が1時間ずつずれ込む異例の事態になった。

対日貿易赤字に不満を隠さないトランプ氏が、米農産物の輸出を持ち出し、議論が長引いたとの見方もある。首相に配慮し、7月の参院選前の妥結を見送る意向を示した決着時期を「8月」と明言。日本側は否定したが、「先制攻撃」を仕掛けるハードネゴシエーターぶりを際だたせた。

会談後の会見で、首相は日本企業の米国への多額の投資や雇用創出を理由に、「世界で最も米国経済に貢献しているのは日本企業だ」と強調。一方、トランプ氏は日本との貿易不均衡を「信じられないほど大きい。あらゆる障壁を取り除き、米国の商品が攻勢に日本市場に根付くことを願う」と、くぎを指した。

日本の記者に、日本側が関税の引き下げや撤廃の土台と考える環太平洋連携協定(TPP)について問われると、「米国はTPPと関係ない。縛られない」と、譲歩を否定。「近く何か発表できる」と踏み込んだ。首相はトランプ氏と同じ考えか、言及しなかった。

今回の来日でゴルフに大相撲、炉端焼きでおもてなし攻勢した首相が、「ドナルドが朝乃山関に米国大統領杯を渡した時の盛り上がりと熱狂は、伝統ある大相撲の歴史に新しい1ぺージを刻んだ。ありがとうドナルド」と持ち上げる場面も。トランプ氏は28日に帰国し、20カ国・地域(G20)で6月に再び来日するが、貿易問題の妥結の参院選後見送りで、トランプ氏に借りをつくった日本側は、トランプ氏の言動を注意深く見守ることになる。