富山県警射水署は13日、他人の飼い猫を盗んだとして、富山市の無職新村健治容疑者(52)を窃盗の疑いで逮捕した。

逮捕容疑は、5月19日に、同県射水市で、同市在住の50代の男性が飼っていた猫1匹を盗んだ疑い。

被害者の男性が容疑者の逮捕を受けて取材に応じ、「逮捕されても、気持ちは晴れない。私にしたら、大事な家族。納得できないし、こんなばかなこと、誰も許さない」と、悲しみと憤りをあらわにした。

男性によると、5月19日に飼っていた3歳のアメリカンカールのオス「モコオ」が連れ去られたという。モコオが連れ去られるところを近所の人が目撃し、車のナンバーと車体の色を記録しており、男性は警察にすぐに連絡したという。

その後、同27日に男性の家族が射水市内の国道8号線を車で走行していると、前方にモコオを連れ去ったのと同じナンバープレートを着けた車が偶然、走行していたのを発見。追跡し、新村容疑者の自宅前で同容疑者に接触した。被害者の家族が「うちの猫を、どこにやった?」と問いかけると、同容疑者は「いたけれど、エサをやったら逃げた」などと、あいまいな返答をしたという。

男性がSNS上で猫が連れ去られたと発信したところ、2月に同県立山町の富山地方鉄道寺田駅にすみ着いていた、看板猫の小太郎(こたろう)がいなくなったとの情報が寄せられた。小太郎の世話をしていた人によると、遊んでいた小太郎の近くで白い軍手を着用した男と車を目撃しており、その車が発車した後、小太郎の姿が見えなくなったという。車も軍手の色も、モコオが連れ去られた際に目撃者が見たものと一致したという。

男性は6月4日に、富山県内のボランティア団体「しっぽのこころ」の宇多利美代表とともに、新村容疑者の自宅を訪問して聞き取りを行い、動画も撮影した。同容疑者は「1年半の間に50匹ほど殺した?」と聞かれると「50匹ほど…はいはい」と答え、猫を連れ去って殺したことを認めた。「興奮した?」と聞かれると「正直なところ…」と答えて、うなずいた。

殺し方について聞かれると「水だけしか与えずに、そのまま…。ほぼ(部屋に)閉じ込めっぱなし」と答えた。その上で「せっかく苦労して捕まえてきたのに、すぐ死んでしまったら面白くない。ニャアニャア、泣いているのを聞いて楽しんでいた」とも答えた。新村容疑者のスマートフォンには、インターネットの検索履歴として「猫閉じ込め」「猫閉じ込める」「猫を殴る」「猫蹴る」などの文言が残っていたという。

一連の行為に及んだ動機を聞かれると、新村容疑者は「ストレス発散。(他の発散方法は)なかった。やっぱり、1人暮らしで誰にも相手にしてくれなかったから」と答えた。ただ、宇多代表によると、同容疑者は電話の発信、着信履歴を毎回、消去していた一方で、「友だちがいない」と言いながらアドレス帳には約270人が登録されていたといい、不信感を持ったという。

被害者の男性によると、モコオは小さい頃に譲り受け、めったに外には出さず、散歩の時もいつも抱っこするなど大切に育ててきたという。モコオも常に飼い主の近くにおり、かわいがってくれる隣家の家族のところくらいにしか出掛けず、遠出もしなかったという。1年半ほど前に、尿結石の手術を受けるなど幾つか、病気にもなったが、最近は元気で「元気になった。健康で良かったね」などと家族で喜び合っていた中で、連れ去られてしまった。

男性は、新村容疑者に聞き取りを行った当時を振り返り「『殺しました』と言うのを聞き、何を言っているのかが分からなくなって、全身に汗をかいた」と怒りを抑えきれない様子だった。【村上幸将】