千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん(当時10)が1月に死亡した虐待事件で、父勇一郎被告(41=傷害致死罪などで起訴)の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告(32)に、千葉地裁は26日、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。執行猶予がついたものの、刑事責任は重いとして、刑は求刑を上回り、執行猶予期間は最長となった。

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小池健治裁判長は「夫勇一郎被告の虐待を制止せず、指示に従い、犯行を容易にした」と罪を認定した上で「父から非人間的虐待行為を受け、母の助けを得られなかった心愛ちゃんの絶望感は計り知れない。悪質な犯行事案の枠内にある」と指摘。さらに「心愛ちゃんから救いを求められても目を背けた」と非難した。

裁判長は「実刑がふさわしいようにも思える」と罪の重さを指摘しつつ、執行猶予を付けた理由を「精神的に脆弱(ぜいじゃく)な面があり、勇一郎被告の支配的言動に逆らえなかったことは否定できず、一概に非難できない。相談相手もいなかった」と説明。さらに「夫から暴行被害を受けたこともあった」とDV(ドメスティックバイオレンス)被害なども認定した。

なぎさ被告は髪を後ろで1つに束ね、白い長袖シャツと黒いパンツ姿で出廷。裁判長が「心愛ちゃんが頼るべきはあなただったのに、夫に同調してしまった刑事責任は重い」と指摘されると、「はい」と小さな声だが、はっきりと答えた。

最後に裁判長から「心に愛と書いて、心愛(みあ)と名付けたこと。沖縄で健やかに小学校に通っていたこと。あなたが思い返さないとふびんです」「心愛ちゃんのことを思いながら、社会の中で反省の日々を送ってほしい」などと説諭されると、なぎさ被告は左手で涙をぬぐった。それまでは裁判長を見つめ、何度が「はい」と答えていたが、最後はすすり泣きが止まらないまま、退廷した。なぎさ被告は5月の初公判でも、心愛さんについて聞かれると「優しくて…。いつも笑顔で明るい子でした」と話し、無表情から一変して声を詰まらせていた。

勇一郎被告は心愛さんへの虐待のほか、なぎさ被告への暴行罪にも問われている。なぎさ被告への判決で、勇一郎被告の起訴内容をほぼ認定しており、審理に影響を及ぼす可能性がある。第2回公判前整理手続きが7月24日に行われるが、裁判員裁判の期日は未定。【近藤由美子】