参院選で、改選議席50の比例代表に立候補しているのは155人。業界団体などの支援を受ける候補がいる一方、多様性が求められる時代を踏まえ、候補者の政策も多様化している。

立憲民主党は、聴覚障害やLGBT(性的少数者)の当事者、「おひとりさま」へのセーフティーネット整備を訴える元キャスターなどを擁立。れいわ新選組は、日本社会のひずみを象徴する候補を選び、話題になった。終盤戦、比例票の争奪も日々激しさを増している。

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3連休最終日の15日、東京・JR新宿駅前では独自の政策を訴える立憲民主党の2候補が、マイクを握った。東京MXテレビなどでキャスターを務めた白沢みき氏(52)は「この国は、夫婦と子ども2人を『標準家族』として、すべての政策が進む。でも、日本は将来4割がシングル世帯になる。単身者が安心して暮らせるセーフティーネットを確立したい」と述べ「堂々。ひとり家族」を掲げた。

未婚で子どもはおらず、「誇りをもって1人で生きてきた」おひとりさまだ。一方で「1人であることに生きにくさを感じても、口に出しにくい空気がある。私も何度も泣いてきた」と話す。高齢の単身者も増えているとして「ひとりでいる人が孤立しないように、国は施策を早く掲げないといけない」と訴えた。

一方、ゲイであることを公表して東京・豊島区議として活動し、初めて参院選に挑戦している石川大我氏(45)は、日本でも同性婚が認められるよう、法案の成立を目指したいと訴えた。「中学の時、自分が同性愛者だと気づいたが、誰にも言えず孤立した。差別は今もこの社会にある」と指摘。区議時代は、同区のパートナーシップ制度の導入に尽力。「今こそ、LGBTが安心して暮らせる社会に変えたい」と訴えた。

同党は政策面で多様性を重視。それを体現できる候補者を多く擁立した。元東京・北区議で「筆談ホステス」で知られる斉藤里恵氏(33)も、そのひとり。1歳の時に病気で聴覚を失い、スムーズに話せないが、選挙戦では連日マイクを持ち、言葉を発して演説を続ける。4年前の北区議選では、なかったことだ。

「聞きづらいかもしれませんが、挑戦しています」。斉藤氏が言葉を話した後、補助者がリスピーク(復唱)するスタイルで、手話通訳が加わることもある。「初めて街頭演説に来たという方もいた。ハンディがある分、私にしかできない視点からすべての人に優しい国をつくりたい」と話した。【中山知子、近藤由美子】

◆おもな政党、団体の比例代表 自民党は33人を擁立。業界団体や組織内の候補が多いが、山田太郎氏(52)や中田宏氏(54)など、かつて他党の国会議員として活動した候補も多いのが特徴だ。著名人は元F1ドライバーの山本左近氏(37)くらい。日本維新の会は地域政党との連携を重視し、候補者14人の中には新党大地の鈴木宗男代表(71)もいる。

共産党は、知名度が高い小池晃書記局長(59)ら7人を擁立。社民党は、「有効投票総数の2%以上」を獲得できない場合、公選法上の政党要件を失うため、吉田忠智元党首(63)ら4人が必死の戦いを続ける。

れいわ新選組は、長時間労働や派遣切りなど日本社会が抱える課題の「当事者」を擁立。1位は難病ALS患者の舩後靖彦氏(61)、2位は脳性まひで重度の障がいがある木村英子氏(54)とし、当選した場合は参議院のさらなるバリアフリー化が必要で、問題提起を込めた人選だ。公明党は17人、国民民主党は14人を擁立している。