第25回参院選は21日、投開票された。自民党は、公明党とともに改選121議席の過半数、63議席の獲得を確実にしたが、改選の66議席を割り込む見通しとなった。

安倍晋三首相がこだわる憲法改正に必要な改憲勢力3分の2(85議席)も、割り込むのが確実だ。自民は32の1人区で東北を中心に苦戦を強いられ、激戦区で現職が続々と落選した。立憲民主党は改選の9議席を大幅に伸ばしたが、結党直後の17年衆院選のようなブームにはならず、「安倍1強」を打ち砕けなかった。

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安倍首相は21日夜、党本部の開票センターで、当確が出た候補者に赤いバラをつけた。民放テレビのインタビューでは、「国民が政治の安定のもとでの政治に期待するという判断をしたのだと思う」と述べた。10月からの消費税率増税を前にした参院選。「増税を掲げて(改選)過半数を取るのは至難の業といわれたが、国民のご理解をいただけたと思う」と述べ、消費税10%にも、国民の理解が得られたとの認識を示した。

選挙戦直前に表面化した「老後2000万円」問題や、イージス・アショアの配備計画をめぐる政府の不手際。逆風となり選挙戦に影響する可能性があったが、自民は、公明と合わせて改選議席の過半数超えという目標はクリア。一方で、改選の66議席には届かなかった。また、安倍政権下の憲法改正に前向きな自公、維新などの改憲勢力は85議席を下回り、非改選と合わせて改憲発議に必要な3分の2議席を割ることも確実に。首相は「悲願」の憲法改正に向けた戦略で、再考を迫られることになる。

今回改選を迎えたのは、12年12月、2度目の安倍政権発足後、初の国政選挙となった13年参院選で当選した議員。「揺り戻し」がはたらくとの見方が強く、首相の目標設定も、非改選も含めて与党で過半数の53議席。目標の低さは責任論回避のためといわれた。

選挙戦で首相は、旧民主党政権や野党統一候補の批判に多くの時間を費やし、一国の首相らしくない感情的な空気も醸し出した。一方、年金制度については安定性を強調。「政策次第では増やしていくことができる」と訴えたが、年金財政の健全性をチェックする5年に1度の「財政検証」の結果は来月発表される。内容次第では、国民の不安を高める可能性もある。

首相は開票前、私邸で麻生太郎財務相と会談した際には「ほっとした」と漏らした。当初模索した衆参ダブル選を見送り、「解散カード」を温存して参院の議席固めを優先。ダブル選について「迷わなかったと言えばうそになる」と漏らす半面、自身の任期中の衆院解散について「選択肢から外しているわけではない」と述べた。早ければ、今年末の衆院選の可能性も取りざたされる。

安倍政権6年半の審判は、盛り上がりに欠ける勝利に終わった。それでも党内には首相が否定してもなお、総裁選4選への待望論が残っている。【中山知子】