東京農工大が9日、府中市の同大で会見し、「プラスチック削減5Rキャンパス」活動を宣言した。2050年の石油ベースのプラスチックゼロを目指し、使い捨てプラスチックの削減、新素材づくりなどに取り組んでいくという。大学全体で宣言し、教育と研究まで包括的に取り組む方針を打ち出すのは、全国で初めてという。

10月からキャンパス内にマイボトル用給水器を設置。来年4月からはキャンパス内の計約30台の自動販売機のペットボトルをゼロにする。現在学内で捨てられている年間約15万本のプラスチックボトルを削減していく。生協では11月からレジ袋を有料化し、布製の置きバッグも導入。将来的にレジ袋廃止を目指す。また大学のノベルティーグッズも、紙製エコファイルや紙ペンなどの循環型素材に順次切り替えていくという。

「5R」は政府が作成したプラスチック循環資源戦略における「3R(Reduce、Reuse、Recycle)+Renewable(再生可能資源への代替)」の基本原則に、研究(Research)を加えた、同大独自の取り組み。大野弘幸学長は「どう変えていくかを抜本的に考えなければ」「将来、石油由来のプラスチックに代わるものを作れると信じています」などと話した。農学研究院の高田秀重教授は「生物への影響も顕在化しつつあり、削減していかなければ」と活動の広がりを訴えていた。

この日キャンパスにいた学生からは「マイボトルは節約のために使っているけど、使えば不便は感じなくなります」「身近なところから変えていかないと、プラスチックを使うのが当たり前という状況は変わらないと思います」「問題は理解できますが、今のままの方が便利。缶だけになると不便だと思います」「削減は不可能ではないけれど、消費者だけでなく、企業の努力も必要だと思います」などの声が出ていた。地球規模でプラゴミ問題が深刻化する中、“プラスチックフリー・キャンパス”の試みが注目される。

 

★東京農工大の「プラスチック削減5Rキャンパス」活動★

【削減策(Reduce、Reuse、Recycle、Renewable)】

◎自販機のペットボトルをゼロに

→ 給水器の設置とマイボトル利用を呼びかけ

◎学内店舗での使い捨てプラ袋の廃止

→ 有料袋導入、マイバック利用を呼びかけ

◎プラスチック減量の大学グッズ採用

→ 大学グッズに代替品を導入

→ クリアファイルに循環型素材を採用

→ ロゴ入りマイボトル販売

【教育】

◎学生への啓発、次世代人材の育成

→ 初年次教育、シンポジウムや勉強会の開催

→ 学生のグッドプラクティスへの表彰

【研究(Research)】

◎プラスチック課題を解決する研究

→ マイクロプラスチック分布及び影響調査

→ 海上プラスチック回収装置の開発

→ バイオマスベースの代替素材の開発

→ ライフサイクルアセスメントの実施

【社会貢献】

◎普及啓発活動・社会との連係

→ 社会への説明、行政や企業との協働

 

★東京農工大 農学部と工学部と、関連する大学院からなる国立大学法人。1874年設立の内務省勧業寮内藤新宿出張所の学問所を前身とし、1949年に設置された。キャンパスは東京都府中市と小金井市。学生と教職員は計約6600人。大野弘幸学長。公開中の新海誠監督のアニメ映画「天気の子」にも登場する。

 

■プラゴミの現状 石油ベースのプラスチックゴミ問題は、昨年からにわかにクローズアップされている。世界からプラゴミを輸入していた中国が、昨年初めに輸入禁止措置を取ったこともきっかけになった。同7月には、米大手コーヒーチェーンのスターバックスが、プラスチック製の使い捨てストローの使用を2020年までに世界中の店舗で全廃すると発表。今年6月のG20大阪サミットでは、新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が打ち出された。スーパーやコンビニのレジ袋の完全有料化も検討されている。

プラスチックは世界で年間4億トンが生産されている。使い捨てプラスチックの1人当たりの使用量は、世界1位が米国、2位が日本、3位が中国。日本では年間約900万トンのプラゴミが排出され、「有効利用率八十数%」としているが、約60%が焼却で、いわゆる再生利用は二十数%に止まる。全体の約15%は東南アジアなどに輸出されている。ペットボトルは年間約227億本が生産。回収率が約88・8%のため、約25億本が回収されず、海などに流出しているとみられる。管理されないプラスチックは、波や紫外線などによってマイクロプラスチック(直径5ミリ以下の微細粒子)になっていき、なくならない。世界の海には計1億5000万トンのプラスチックゴミが浮遊し、そこに少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定されている。廃棄物管理が今の水準とすると、2050年には海の中のプラスチックの重さが魚の重さより大きくなると推定されている。