来年の東京オリンピック(五輪)期間中、東京メトロや都営地下鉄は都内の主要ターミナル駅3カ所に、乗客の不審物所持を調べる旅客スクリーニング装置を導入する方針を固めたことが29日、分かった。国内の鉄道駅で旅客スクリーニングが行われるのは初めてとなる。JR東日本とJR東海は1都3県の新幹線主要駅に、爆発物探知犬を配置する方針。テロを含めた重大犯罪を未然に防ぎ、五輪期間中の鉄道の確実な安全確保を目指す。

政府関係者によると、五輪期間中に旅客スクリーニングを行う方針が固まったのは、東京メトロ及び都営地下鉄の新宿、池袋、渋谷駅の3駅。すべての改札機ではなく、特定の改札機に「ボディースキャナー」を設置し、旅客スクリーニングを行う予定。

「ボディースキャナー」は乗客の服を透視して、刃物や爆発物などの不審物を隠し持っていないか、瞬時に調べることができる検査機。基本的に乗客は歩行速度を緩めることなく、不審物チェックを受けることが可能だ。3月に東京メトロ霞ケ関駅で、「ボディースキャナー」を使用した不審物の旅客スクリーニングの実証実験が行われた。その結果、一定の効果が見込まれるとして、現段階では、検査は乗客全員ではなく、一定数の乗客にランダムで行う可能性が高い。

導入予定の3駅は、いずれも利用客が1日10万人以上を超える大規模ターミナル駅。別の政府関係者は「危険物所持検査の観点からは乗客全員のスクリーニングが望ましいが、全員検査となると、改札機前が大渋滞してしまう」と指摘。第一に、スムーズな旅客流動を目指すとみられる。

また、爆発物探知犬が五輪期間中、常時配置される見込みなのは、1都3県の新幹線拠点駅である東京、上野、品川の3駅。JR東日本とJR東海では、大宮、新横浜でも配置する方向で調整している。

政府関係者は五輪期間中、日本の鉄道では初となる不審物所持検査導入や爆発物探知犬配置を固めた理由について「18年に起きた東海道新幹線での乗客殺傷事件もきっかけの1つ」と説明。さらに「海外に比べ、日本はテロ対策が遅れている。今回の五輪では、鉄道もしっかり対策を取らないといけないという危機感の表れだ」と話している。