関東最古の寺、千葉県君津市鹿野山の神野寺で、毎年10月9日の「奥の院開扉法楽(てんぐ様のお祭り)」に合わせて行われる「日本一大きいジャンボおはぎ」奉納が、今年は千葉県被災地復興祈願として行われることが2日、分かった。

巨大おはぎ奉納は年に1度行われる「奥の院」に奉られた秘仏のカラスてんぐ「飯縄大権現」公開に合わせて開催される。主催の地元ボランティア団体「鹿野山・愛彩の会」会長の小出勝美さん(73)によると、過疎化が進む地域活性化のため、16年から奉納を始めた。台風15号の大きな被害に、秘仏公開及び奉納はいったん中止したが、寺側は「被害を受けたのはうちだけではない。台風被害に遭われた被災地すべての復興祈願を込めたい」として開催が決まった。

寺の台風被害は深刻で、すべてのお堂が損傷を受けた。国指定重要文化財「表門」は倒壊。「奥の院」は屋根がめくれ上がり、風雨が吹き込み床や畳が水浸しになり、前部分が少し浮いた「半倒壊」状態だ。

聖徳太子が開いた名刹(めいさつ)は存続の危機に立たされている。副住職の岩間照種さん(47)は「『表門』は勝手に修復できず、他部分は修理したくても大工さんの手が足りず、来てもらえない」と、修復が進んでいない。「被害額は少なく見積もっても、確実に数億円はいく」とした上で「修復も国からの補助金や保険、お寺の負担だけでは到底無理。寄進(=寄付)を募らないと無理です。完全復興に10年くらいはかかる」とため息をついた。

昨年、奉納したおはぎの大きさは直径140センチ、重さ64・5キロ。年々巨大になっているが、今年は復興がままならない中で行うため、昨年並みの大きさを目指す。小出さんは「来年はギネスに挑戦できれば。新しい挑戦がさらに地域の活性化につながる」と意気込んでいる。【近藤由美子】

◆神野寺(じんやじ) 598年聖徳太子が創建と伝わる。敷地は東京ドーム約3個分にあたる約4万坪。徳川将軍家との縁が深かった。高浜虚子が句会を開いたことも。79年、寺で飼っていたトラ3頭が脱走。1頭は捕獲、1頭も2日後に射殺されたが、残り1頭は射殺されるまで約1カ月間、周辺を逃げ回った。真言宗。千葉県君津市鹿野山324の1。