萩生田光一文科相は1日、大学入学共通テストへの英語民間検定試験について20年度の導入延期を発表した。制度自体に批判がある中、自身の「身の丈」発言で受験現場をさらに混乱させた責任は重い。野党は引責辞任へ追い込む構えだ。

萩生田氏は安倍晋三首相の側近で、進退に発展なら首相には致命的な打撃。初入閣の閣僚2人が「政治とカネ」で連続更迭された上、萩生田氏もピンチ。「ドミノ辞任」は確実に、安倍政権の体力を奪い始めた。

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野党からの再三の延期要求に応じる構えをみせてこなかった萩生田氏が、一転、試験導入の延期を発表した。先月25日以降、菅原一秀経産相、河井克行法相が「政治とカネ」で立て続けに更迭される中で、事実上の「白旗」(与党関係者)。安倍政権が受けたダメージの大きさは、隠しようがなかった。

しかも、延期は萩生田氏の「身から出たさび」でもある。受験生の経済格差や地域格差を容認するような「身の丈に合わせて頑張って」発言が、さらに事態を悪化させた。萩生田氏は会見で、自身の発言が「延期判断の直接原因ではない」と強調したが、自民党内でも「上から目線」の発言を突き放す声が拡大。延期しないと、安倍政権自体がもたなくなるとの危機感も、働いたとみられる。

萩生田氏は首相の側近。野党は「お友達」の象徴を引責辞任に追い込む構えだ。菅原、河井両氏に続いて、首相に近い萩生田氏も進退問題に発展すれば、政権の骨格はさらに弱まる。野党関係者は「萩生田氏を追い込むことは、単なる辞任ドミノをねらうのではない。安倍さんを追い詰めるためだ」と指摘。辞任のターゲットはすでに、首相自身。首相も追い詰め、内閣総辞職や追い込まれ解散・総選挙のシナリオも描く。

第1次安倍政権では、閣僚のドミノ辞任や参院選での自民党惨敗が、首相の退陣を招いた。「お友達&在庫一掃」といわれる今の内閣は、他にも問題を抱える閣僚がおり、ドミノがさらに広がる可能性もある。長期政権の緩みなのか、身体検査の甘さが指摘される中、「任命責任は私にある」と言いながら政権運営を続ける首相の対応も、もはや限界に近づきつつある。

河井氏の辞任で審議が止まった国会は、5日に再開され、6日に衆院、8日に参院での集中審議実施が決定。首相も出席する。20日まで政権を維持できれば、在任期間が歴代最長で歴史に名を残すはずの首相だが、足元はぐらついている。【中山知子】