8月14日に従業員のストライキで一時、業務が停止し、9月24日に通常営業を再開するまでストが続いた東北道・佐野サービスエリア(SA=栃木県佐野市)上り線のフードコートと売店の運営会社「ケイセイ・フーズ」労働組合の関係者が7日、東京・霞が関の厚生労働省で会見を開いた。前総務部長の加藤正樹執行委員長は、翌8日午前7時から同8時までの間に、レストランで時限ストを行うと明らかにした。フードコートと売店は営業するという。

佐野SAの問題は、ケイセイ・フーズの親会社に関する信用不安情報が商品を卸す取引先業者に露見し、7月25日前後から商品が納入されなくなったことに端を発した。加藤氏が、代金を前倒しで支払う旨の覚書を作成し再び納入され始めたが、覚書にサインした当時の岸敏夫社長が内容の変更を求めて反発。8月13日午後に、加藤氏が会社の資金繰りが厳しいことを糾弾した途端、解雇されたことを受けてストに発展。それが9月17日になって、会社側から労組に現場復帰しないかと打診があり9月22日に復帰が実現。同24日に通常営業を再開し、ストを集結する旨、宣言。岸社長は退任し、後任に佐野市内で建設会社を営む、福田紳一氏が就任した。

ただ、加藤氏によると、9月17日の段階で会社側から代理人弁護士を通じ文書が届き、その中に福田氏が新社長を引き受ける条件として、スト中にSNSで一方的にさまざまな情報を発信するなどした加藤氏の退職と記されていた。さらに10月31日の会社側の回答書には、加藤氏が速やかに退社しない限り、諏訪正宏執行副委員長、執行委員の井原永治支配人ら3人の組合役員に、損害賠償請求訴訟を提起すると記されていた。

加藤氏は「スト自体、法律で守られるスト行為ではないと…認識のズレはあるが、ここまで乖離(かいり)していたのかと。そもそも、私が辞める前提だったと退社の強要が始まった」と、会社との認識のズレが大きいことを強調。「正当なスト、争議行動と認められたいというだけ。損害賠償請求もしないで欲しい。でも、ストと認められれば(損害賠償請求をしないことなどは)満たされると思う。それが満たされないのは理解できない」と主張した。

また加藤氏は、台風19号で佐野市内の秋山川が決壊し、被災した社員9人に福田新社長が渡したお見舞金の額に疑問を呈した。福田社長は、特に被害が大きかった社員2人に100万円、7人に10万円ずつのお見舞金を払ったという。加藤氏は「(100万円という額は)人が亡くなっても、こんなに払う規定がない。しかも、その時期は、取引先の支払いが滞っている。そんな時期に、お金に困っている会社がするには正直、法外な額。とにかく、我々をつぶしたいという気持ちが伝わってくるような行為」などと批判した。

その上で、加藤氏は前日6日に、会社から自宅待機を命じられたと明かし「待機しろ、従業員と全く話さないようにしろと。解雇一歩前と感じる書面が送られてきた」と憤った。ストについては「ストは現状、明日やってみて考える。継続ありきではない」と語った。

また加藤氏は、東北道を管理、運営するNEXCO(ネクスコ)東日本と子会社のネクセリア東日本に対し同日、申し入れ書を提出したことも明らかにした。申し入れ書には

<1>ケイセイ・フーズに不当な主張を撤回するよう指導すること

<2>加藤氏への退職推奨を行わないことを確約させた上で、ケイセイ・フーズと再契約すること

<3>それが取り付けられない場合、同社との契約を解消した上で、新たに運営委託契約を結ぶ会社との間で、佐野SAで働く従業員全員の雇用を継承することを確認し契約内容とすること

との内容が記されていた。

加藤氏は「NEXCO東日本の社会的使命は、高速道路を安心、安定的に運営することだと私は思う」と述べた。その上でNEXCO東日本とネクセリア東日本に対し「今の佐野SAは、もう当事者同士で解決する状況は超えている。交渉相手として引きずり出したい。ただの大家と店子(たなこ)の関係ではないと、日常でも感じる」と、使用者としての対応を求める考えを強調した。【村上幸将】