女性にハイヒールなどを強いる日本の企業の服装規定をなくし、選択肢が男女同じになることを目標にした活動「#KuToo」発信者の石川優実氏(32)ら「女性へのパンプス・ヒール強制を考える会」が3日、東京・霞ケ関の厚生労働省に要望書を提出した。

厚労省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会では、ハラスメントに関する企業向けの指針が審議されている。ただ10月21日の審議会で「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上高ずべき措置等に関する指針の素案」には、女性へのヒール付きの履物の着用指示を含む外見・服装等の指示に関する記述がなかった。石川氏らは、そのことにショックを受け

<1>事業主が業務上の必要性のないヒール付きの履物など特定の外見・服装等を一方の性別にのみ指示することは性別に関するハラスメントに該当し得ると指針に明記

<2>一方の性別にのみ、また、性表現の多様性に配慮せず、事業者が労働者に対し、外見・服装等を指示することは性別に基づく差別として禁止

<3>就活関連事業者や大学、専門学校等の教育機関に対し、必要であれば文部科学省等とも連携しながら、就活においてヒール付きの履物の着用が必要であるなどの偏った情報を提供しないようにすること、就活時の外見・服装のあり方については性表現の多様性に配慮した情報発信をすることなどを注意喚起して欲しい

と要望した。

石川氏は、自らが職場でパンプスを履き、小指から連日、出血するなど足を痛めた経験を踏まえ、1月24日に「いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい」とツイートした。そのツイートが反響を呼び、同26日には賛同者がハッシュタグ「#KuToo」ができ、インターネット署名サイト「Change.org」で署名活動に発展した。

石川氏は6月3日に、1万8856筆の署名と要望書を、厚労相と労働政策審議会雇用環境・均等文化委員会に提出した。ただ、その際、担当者から「(パンプスやヒールで女性が苦しんでいるとは)初めて聞きます。受け止めますが(履くのは)マナーであるというのはあるので、世間の声を変えて欲しい。そうでないと法律も変えにくい」などと言われたという。

石川氏はその後も運動を続けた結果、「#KuToo」は前日2日に都内で表彰式が行われた「現代用語の基礎知識選 2019ユーキャン新語・流行語大賞」で、トップテンに選ばれた。「インターネット上で出てきた運動で、現実世界の温度差はあったけれど、新語・流行語のノミネートで1つネットの枠を超えた」と手応えも感じている。厚労省の担当者が要望した社会的なムーブメントを起こしたにも関わらず、変わらない現状に、石川氏は「女性のみに義務付けられる男女差別の中で、パンプスは実際にケガする人がたくさんいるのに放置して良いのでしょうか? 市民が、ここまでやっても動いてくれない。どうしたらいいだろう。悔しい」と目に涙を浮かべた。

石川氏は今後の方向性について聞かれ、女性が履きやすい「#KuTooシューズ」をプロデュースしたことを引き合いに「就活用のスーツなどのパンフレットで、靴はパンプスしか載っていない。履く靴は生み出したので、スーツの形を作ることも考えたい」と、今度はスーツなど服の商品開発も視野に入れていると明かした。

その上で「法制化への動きだけでなく、運動を日常に持っていくことが大事。私が運動とタレント活動と並行するのは、それが大事だと思うから」と訴えた。【村上幸将】