金融商品取引法違反罪などに問われ保釈中だったカルロス・ゴーン被告の国外逃走を、国際政治学者舛添要一氏はどう見たのか。舛添氏に聞いた。

<1>日本出国の方法は プライベートジェットであっても、入出国管理、荷物検査は行われる。手段として唯一、手段があるなら、外交官特権だ。私も大臣時代は外交旅券を持っていたが、出入国では管理の職員に一応は顔を見られる。変装ですり抜けるのは難しい。ただ、荷物は別だ。外交関係に関するウィーン条約で外交官の持ち物は見てはいけないことになっている。楽器ケースでも、大きなスーツケースでも、体が入りさえすれば可能だ。

<2>どこの国の関与が考えられるか 被告がレバノンですぐに大統領と会ったことなどから見ても、レバノンの可能性は高い。在日大使館も被告とは何度も面会しており、相談できた。トルコ経由なのは、被告の関係先のレバノン直行では怪しまれる恐れもあり、偽装のために親日国でもあるトルコを経由したと考えられる。トルコには妻キャロルさんの親族がおり、関与の可能性もある。マスコミも当局職員も手薄で入出国ラッシュの年末を狙った。半年以上の入念な準備がなければ実行できない作戦だ。

<3>「フランス旅券」は本物か 入国先のレバノンが関与していれば「フランス旅券」は真正でも偽造でもどっちでもよく、存在してなくても問題ないことになる。仮に真正旅券でも、フランスはレバノンの顔を潰すような発表はしないだろう。いずれにせよ、2020年東京五輪・パラリンピックを控える日本は、今回の出入国管理の穴の詳しい検証、逃亡を許してしまった裁判所側の対応など、後始末が大変な問題を抱えることになった。