昨夏の参院選をめぐる車上運動員の選挙報酬に関し、公職選挙法違反の疑いが出ている自民党の河井克行前法相と妻の河井案里参院議員が15日深夜、突然開いた記者会見に16日、与野党双方から、強い批判の声が起きた。

夫妻は、広島地検の家宅捜索が入ったこと盾に、疑惑の真相には一切言及しない半面、議員辞職や離党は明確に否定するという、ご都合主義の主張を展開した。また、開始30分前にメディアに通告した上で、午後10時と同10時半から別々に会見するという強引さも加わり、自民党内でも「あれでは記者会見をした意味がない。夫婦で墓穴を掘っただけだ」(関係者)と酷評する声が上がった。

約2カ月半、雲隠れを続けた末に、夫妻が取ったお粗末な対応。立憲民主党の安住淳国対委員長は「あれではおよそ説明になっていない」と、指摘。野党は国対委員長会談で夫妻に衆参両院の政治倫理審査会での説明を求める方針を決めた。

この日は、20日に召集される通常国会に向けて、与野党の日程協議も行われたが、野党側はまず、夫妻によるきちんとした説明の場を求めたため、与党と折り合えないなど、通常国会に向けて少なからず、影響も出ている。

16日には、河井氏と同様に公選法違反の疑いが浮上し、昨年更迭された菅原一秀前経産相が記者会見を開くとの情報も一部で流れていたが、結局、開かれなかった。菅原氏も大臣辞任後、国会に現れておらず、説明責任を果たしていないと批判が強まっている。

そもそも河井夫妻がこのタイミングで会見したのも、20日に始まる通常国会を初っぱなから大混乱させないため、最低限の「環境整備」だった側面が大きい。ただ、これまでの行動について一定のけじめをつける場になるはずが、夫妻の会見内容はあまりにもひどく、目的とかけ離れる結果に。同様の立場に置かれた菅原氏が会見を開く場合、ハードルが上がってしまったのではないかと、いぶかる向きもある。【中山知子】