安倍晋三首相は2日の参院予算委員会で、新型コロナウイルス感染拡大を受けて全国の小中高校などへの休校要請について、専門家の意見ではなく自身の判断だと明かした。

「政治決断」と強調する割に、肝心の答弁は加藤勝信厚労相らに「丸投げ」する場面が多く、安定答弁が持ち味の加藤氏が、何度も立ち往生する事態に。「場当たり的」「後手後手」。野党の批判に、首相は堂々と反論できず釈明を繰り返した。混乱解決の見通しが立たない中、全国で休校が始まった。

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先月29日の会見で、休校要請を決めた具体的根拠を明確に示さなかった首相。この日「直接、専門家の意見を伺ったものではない」と、専門家会議の提言に基づく決定ではないと明かした。まさに独断だった。

「事前準備の時間が少なかったのは、その通り。負担をかけることは本当に申し訳ない」と述べた上で「大人だけでなく子どもたちにも感染事例はある。学校での新たなクラスター(感染者の集団)発生だけは避けなければ」と理解を求めたが、判断に至った具体的根拠だけでなく、疫学的な根拠も得られていないことが、分かった。

政治決断だと強調した首相だが、指名されても質問に答えず、代わりに答えた加藤氏は普段の安定ぶりと対照的にボロボロ。マスクの備蓄に関して明確に答えられず、審議を30分中断させた。大臣席で官僚と答弁内容を協議するなど、準備不足が明確だった。

1人当たりの空間が狭い学童保育の方が、休校した学校より集団感染の恐れがあるとの指摘には、そのリスクを認めた。空き教室を使い教員の協力を仰ぐと述べると、「学校とどこが違う」と、突っ込まれた。

加藤氏は首相に近いが、同様に側近の萩生田光一文科相ともども、休校方針は発表当日に知ったという。首相は休校方針をごく近い周辺と練ったとされるが、正常な根回しを省いたことで大臣答弁も混乱させた。

発表された政府基本方針は、イベント自粛や休校要請の内容が発表翌日に修正され、周到な準備がいかに足りなかったかを示している。「聞けば聞くほど場当たり的。あなたが混乱を招いている」。立憲民主党の蓮舫氏に批判された首相は「そうではない」と反論したが、「今後1~2週間が瀬戸際」とする専門家会議の見解をひたすら繰り返し、政治決断のもろさが随所ににじんだ。追い込まれた感のある首相は、野党も巻き込んでの法整備を早急に進める意向を表明。野党は「抱きつき戦術」と、警戒している。【中山知子】