東京電力福島第1発電所の事故で全町避難となった福島・大熊町大川原に、震災後初となる夜間営業の飲食店「ダイニング大川原」が2日、オープンした。あす5日には昨年4月以来の帰宅困難区域の一部解除となるが、住民の帰還は進まない。
暗闇の町にともる小さな灯は、故郷に戻った町民たちの憩い、交流、復興へ絆を紡ぐ場となることを目指す。再生への小さな第1歩がスタートした。
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どこまでも真っ暗だった町の夜に灯がともった。店内には故郷に帰ってきた約40人の町民の明るい声、笑顔に満ちあふれていた。どこの町にもある飲食店だ。集い、語らい、旬の食事を楽しみ、酒を酌み交わし、朗らかに笑う。そんな、どこにでもある光景を手にするのに約9年の歳月を要した。突然の喪失と絶望の時から、かつて普通にあった生活の一部をようやく取り戻した。午後5時から閉店の同11時まで明るい笑顔は絶えなかった。
昨年4月10日、全町避難指示から初めて町面積の約38%にあたる約30平方キロメートルが一部避難解除となった。今年2月1日時点で町に住民登録している居住者数は130世帯153人。大熊町役場によると「推計人口は約733人」で、そのうち約600人が廃炉作業にあたる作業員や関係者としている。町民の帰還は進んでいない。
昨年5月7日、県内各地に機能を分散していた大熊町役場が地元に帰った。その町役場の北側に「ダイニング大川原」はある。店内はテーブル席、座敷ほかに立食なら約100人を収容可能な宴会場もある。「地元に戻って来た人たちが法要や宴会に利用していただき、廃炉作業の関係者の方には懇親や会議などに利用してもらいたい」と運営するサンライフ社の志賀勝彦社長(73)は多目的な活用を期待している。
待ちに待ったオープンだった。町内には一時帰宅した住民が利用できるように、昨年4月オープンの「大熊食堂」があるが、昼のみの営業だった。夜間営業の飲食店は再生インフラのひとつとなる。「若い人たちも地元に戻って来て欲しい。ご近所の方から昼間にカラオケを利用したいという、うれしい声も」と、志賀氏は人と人をつなぐ広場となることを切望する。
5日、JR広野駅周辺など一部避難解除(約28ヘクタール)となるが、除染作業は続く。町には廃炉とともに大量発生する汚染水や汚染土の中間貯蔵施設など風評被害などの問題は山積みのままだ。26日には聖火リレーが大熊町役場をゴール地点に行われる。復興五輪のシンボルが町を駆け抜け、再生へと歩み出す「町の灯」も、ともった。【大上悟】
◆大熊町の現状 2011年3月12日、東京電力福島第1発電所から半径10キロ圏内、同町のほぼ全域に全町避難指示が発令され、4235世帯、1万1505人が避難し、居住していた約96%の地域が「帰還困難区域」となった。今年2月1日時点で町に住民登録がある居住者数は130世帯153人。町に住民登録がある居住・避難者数は計4719世帯1万301人(仮設入居45人含む)。内訳は県内3510世帯7853人、県外1209世帯2448人。11年3月11日時点から住民登録者は1204人減少している。

