安倍晋三首相が、新型コロナウイルス感染拡大を受けて中国、韓国からの入国制限を強化することを5日に唐突に表明したことに、6日、国内外で波紋が広がった。

首相は「機動的な水際対策も、ちゅうちょなく断行することが不可欠」と述べたが、中国全土からの入国拒否を含めた水際対策の徹底を求める声は、与野党双方から出ていた。感染拡大防止で腰の定まらない対応を続ける安倍政権。今回は後手に回った上に唐突すぎる対応で、野党側は9日以降の国会審議で追及する構えだ。

立憲民主党の福山哲郎幹事長は、6日の党会合で「政府の水際対策は既に破綻している。水際対策の破綻をごまかすため、泥縄で一方的に決めたと言わざるを得ない」と指摘。国民民主党の舟山康江参院国対委員長は会見で「水際対策は初期こそ有効なのに、なぜこのタイミングでいきなり厳しい措置を取るのか。論理的整合性がない」と批判した。

これまで政府側が、中国側に強硬な措置をとれなかった背景に、中国側への忖度(そんたく)が、指摘されている。感染拡大防止対応のため、日中両国が4日に習近平国家主席の国賓来日延期を発表したが、延期が正式に決まるまでは入国規制強化を打ち出せなかったとの見方は根強い。首相は3日の参院予算委員会で中国への配慮で初動が遅れたとの指摘に「まったくない」と反論していた。

一方、中国側は武漢市を含む湖北省以外では収束傾向にあると発表したばかりで、今回は間の悪い決定。後手後手の批判をかわすための対策が、さらに後手後手批判を招く安倍政権の悪循環は依然、続いている。【中山知子】