安倍晋三首相は16日夜の先進7カ国(G7)首脳とのテレビ電話会議で、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて延期論が出ている東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて「完全な形で実現するということについて支持を得た」と発言した。その後の取材でも時期について言葉を濁した。

首相にとって、中止や無観客、一部の国が参加しない「不完全な」形の実施は避けたいのが本音だ。一連の発言から、首相は延期してでも完全な形での大会実施を見据えているとの見方が17日、一気に広がった。

首相は、トランプ米大統領と電話会談後に臨んだ14日の会見では「延期や中止は一切話題になっていない。感染拡大を乗り越え、無事予定通り開催したい」と述べたが、その後は微妙に“後退”。16日の参院予算委員会では「日本だけでなく、世界が新型コロナウイルス感染症を克服したことにつながる五輪にしていきたい」と述べたが、世界の感染状況は拡大する一方で収束の見通しなど立たない。言外に「延期あり」をにおわせる発言だった。

首相は17日の自民党両院議員総会でも「世界が結束してウイルスに打ち勝った証しとしての大会を、開催しようではありませんか」と発言。世界の感染収束後の開催により踏み込んだ。

首相と12日に会談した東京都の小池百合子知事も、中止や無観客は強く否定しながら、今のところ延期には言及していない。

仮に中止となれば首相の政治責任が浮上し、求心力は一気に下がる。再選がかかる都知事選出馬の判断が迫る小池氏にも大誤算だ。コロナショックで経済が冷え込む日本そのものが、致命的打撃を受けかねない。永田町では「誰もが中止だけは避けたい。そのための方策を探っている」(関係者)との声が出ている。【中山知子】