きしきしと線路を伝って近づいてくる音が聞こえる。「きた! 見えた! 」。鉄道カメラマンたちの高揚した声がはじける。緩やかなカーブを曲がり、目の前の桜並木に姿を現したのは「SL人吉」だ。熊本-人吉間を1日1往復で運行している数少ない現役の蒸気機関車で、春になると桜と絡めたショットを撮影しにやって来る。

カメラマンの中には、SLが現役バリバリで走っていたころから撮影している人も多い。ある男性は「桜の時期は短いし今ではSLの本数も少ない。その中で黒煙の上がり方とか桜の咲き具合も毎回違う。少ないチャンスで狙ったようになかなか撮れないけど、それもまた良い」とうれしそうに話す。

そんな中「SL人吉」が青空を背に満開の桜の下を勢い良く通過した。カメラマンたちは「なんだ。今日は煙が全然出てなかったよ~」と悔しがる。それでもその表情は童心に帰ったようだった。

<撮影データ>4月6日午後12時9分撮影 キヤノン「EOS 6D Mark2」 24-70ミリ(焦点距離42ミリ) ISO感度500 シャッタースピード800分の1 絞り9