自民党の望月義夫元環境相の死去に伴う衆院静岡4区補選は26日投開票され、自民党新人の深沢陽一氏(43)が、立憲民主、国民民主、共産、社民4党が推薦した新人田中健氏(42)ら3人を破り、初当選した。

新型コロナウイルス感染拡大のさなか、初の国政選挙。自民党にとっては望月氏の「弔い選挙」でもあり、絶対に落とせない戦い。事実上の与野党対決の構図で、勝敗の結果は、新型コロナウイルス対応をめぐる対応のまずさが際だつ安倍政権に、さらなる打撃を与えかねないところだった。それだけに、党内では安堵(あんど)の声が広がっている。

安倍晋三首相以上に、胸をなで下ろしているのは岸田文雄政調会長かもしれない。望月氏は、ポスト安倍を目指す岸田氏の貴重な「腹心」だった。岸田氏は昨年夏の参院選でも、地元の広島選挙区で、岸田派重鎮の溝手顕正氏が「2議席独占」を目指すとして党本部主導で擁立した河井案里氏や野党系候補に敗れて、落選。そんな経緯もあり、ポスト安倍を目指す上で、派閥をまとめる観点からも、岸田氏の求心力低下は避けられないと指摘されていた。

岸田氏はこれに加え、新型コロナウイルス対応をめぐっても対応のまずさを露呈。自身が主導し、首相と会談して決めた、減収世帯に30万円を給付するとした緊急経済対策は、1度は閣議決定されたものの、給付制度の分かりにくさなど批判にさらされ、自民、公明両党の巻き返しにあった。全国民への一律10万円給付へ、異例の差し替えとなり、岸田氏は、はしごを外された上に、メンツをつぶされた経緯もある。

今回の補選の結果は「ポスト安倍」に踏みとどまれるか、岸田氏にとって正念場でもあった。自民候補の勝利で面目は保ったが、党内では信頼回復は容易ではないとの声も出ている。

選挙戦は、緊急事態宣言の発令を受けて、候補者や各党幹部ともに屋外での活動を自粛せざるを得ない、異例の体制下で行われた。野党側は候補者を一本化して臨んだが、異例の選挙戦で攻勢の出はなをくじかれたこともあり、支持拡大には至らなかった。

投票率は34・10%で、現在の区割りになってからは過去最低。