立憲民主党の枝野幸男代表は28日の衆院予算委員会で、旧民主党政権時代の11年、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の対応に当たった自身の教訓を引き合いに、新型コロナウイルス対策に当たる安倍政権の姿勢を「『正常性バイアス』に陥っているのではないか」と、指摘した。

この日から、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた20年度補正予算案の本格的質疑がスタート。枝野氏は「正常性バイアスとは、被害が予想される状況でも日常的、正常の生活の延長の出来事としてとらえ、都合の悪い情報を無視したり過小評価し、対応が遅れることだ」とした上で、補正予算案の中に事態収束後を見据えた観光キャンペーン費用が1・6兆円盛り込まれていると指摘。「旅行や外食をせず、家にいてほしいとお願いする局面で、収束後のことを考えておくのはいいが、これこそ正常性バイアスに陥っている象徴ではないか」と訴えた。

その上で「事態が急激に悪化していく中では常に最悪の事態を想定することが必要。私も9年前、いやというほど痛感した」と言及。「常に最悪を想定したつもりが、現実は、想定した最悪よりさらに悪化した場面があった。じくじたる思いがあるし、被災者や被害者の方には繰り返し、おわびを申し上げる次第だ」と、当時の反省を口にした。

今後、さらなる補正予算案をつくることも念頭に、できる限り財源は確保すべきとの認識を示し「急がない予算は棚上げし、執行を停止することが最悪に備えるという姿勢ではないか」と述べ、再考を求めた。

これに対し、安倍晋三首相は「正常性バイアスには陥っていない」と、枝野氏に反論。観光や運輸、イベント、エンターテインメントなどの業界が、自粛要請の中で苦境に陥っている現状に触れ「今は命や生活を守ることが最優先だが、収束後に反転攻勢できる未来を示すことも政治の役割だ」と、意義を訴えた。

新型コロナ対応の補正予算案審議のため、野党の政府に対する激しい対立姿勢は影を潜めた。枝野氏も「政府に提案し、足りないことは補い、おかしな政府方針があれば指摘をするが、協力することは最大限協力する」と、呼びかけた。