新型コロナウイルス禍で臨時休校が長引く中、「9月入学・始業」をめぐる論議が急浮上している。日刊スポーツ新聞社が29日、ネットで「9月入学制についてどう思いますか」という緊急アンケートを実施したところ、反対が約55%で、賛成の約41%を上回った。特に10代以下では反対が約77%に上った。安倍晋三首相が検討の姿勢を見せたり、全国知事会が国に検討を求めるなど推進ムードが高まるが、ここでの子どもたちの声は逆だった。

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「9月入学・始業」をめぐる緊急アンケートに寄せられた918の声をみると、10代~40代までと、50代以上の中高年層とで、回答が鮮明に分かれた。

10代以下では反対の77%に対し、賛成は20%にとどまった。年代が上がるにつれて賛成が増えていく。20代は反対73%、賛成24%。30代は反対70%、賛成25%。40代は反対54%、賛成42%。ここまでは反対のほうが多数だった。ところが、50代以上の年代では逆転する。50代は反対41%、賛成54%。60代は反対19%、賛成75%。70代以上は反対25%、賛成70%だった。

9月入学・始業論は、臨時休校が長引き、地域や家庭など個別の事情によって、学習の機会や進み方など教育の格差が生まれる懸念が高まり、浮上してきた。海外で主流の制度に合わせる機会との意見もある。

しかし集まった10代以下の声で、反対の内容は主に次のようなものだった。

▼学費や生活費の増加など経済的問題への不安

▼受験も先延ばしになる可能性への不安

▼すでにオンライン授業などの対応が始まっている中での大幅方針変更への反発

▼9月にコロナ禍が収まっている保証がない中での制度変更への疑問

▼準備期間が短く、できると思えない。拙速にやるべき問題ではない

▼早く進学、就職したい

▼卒業式や入学式は桜の季節がいい。梅雨、猛暑、台風の季節は嫌。

20~30代も含めた若者の対案としては

▼オンライン授業の環境を拡充する

▼夏休みなどを使って授業し補う

▼入試の出題範囲を絞って教育格差に対応、などの意見もあった。

一方、高齢層に多かった賛成の声は次のような内容が多かった。

▼オンラインではできない教育がある。これ以上の詰め込みは無理。延長し時間が必要

▼現行教育制度は限界で、変化の機会

▼グローバルスタンダードに合わせ、国際化をすすめる機会。一方で、若者と同様の強い反対意見も少なくない。社会全体や文化などにも影響するだけに、各世代の意見は単純な白黒でないものも多く、あらためて問題の大きさを浮き彫りにした。