新型コロナウイルスを巡ってさまざまなフェイクニュースが出る中、2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授(78)の名前を使った偽情報が世界に拡散し、本庶氏と京都大が緊急声明を出す騒動があった。

偽情報は4月24日、本庶氏の写真とともにインドのSNSにヒンディー語で投稿された。「ノーベル賞受賞者の本庶博士が『ウイルスは自然に由来するものでない。中国で人工的につくられた』と発表した。博士は武漢の研究所に4年間勤務している」という内容で、フェイスブック、ツイッター、ウェブサイトなどで1万回以上転載され、英語、、フランス語、トルコ語、クロアチア語、スロベニア語、ソマリア語など、さまざまな言語で拡散した。拡散するうちに「私が言ったことが虚偽であることが判明したら、ノーベル賞を取り消してもいい」とのコメントまで付け加えられた。

中国では最大手のメディア「新浪」がSNS「微博」で発信。「ノーベル賞受賞者もその程度か」「米国の手先」など批判が次々と書き込まれた。27日、事態を把握した京都大は本庶氏に確認し、同日、英語で、28日に日本語で緊急声明を大学ホームページで発表した。本庶氏は「世界中が苦しんでいるさなかに、わたしと京都大学の名前が偽の告発と誤った情報を拡散するために使用されていることに、非常に驚いています」「根も葉もない主張がまかり通ることは極めて危険で破滅的なことです」と訴えている。

本庶氏は4月に入って新聞やテレビを通じて、PCR検査を10倍以上増やすことなどを提言しているが、新型コロナウイルスの起源については発言していない。武漢の研究所に勤めたこともない。京都大広報課では「先生はツイッターアカウントも持っていない」と話している。【中嶋文明】