政府の新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言を受け、一時休業する店も多い日本を代表する繁華街、東京・銀座では、SNS上で助け合いの輪が広がりつつある。

創業100年の老舗和菓子店「木挽町よしや」3代目の斉藤大地さん(34)が、4月から同店公式ツイッターで「もの繋ぎプロジェクト」を展開している。老舗も世界的企業もつながり、銀座一体となって、厳しい時期を乗り切ろうとしている。

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「もの繋ぎプロジェクト」は商品を贈られた店(企業)が、次の店に自分のおすすめ商品を贈るもので、「木挽町よしや」のツイッター及びインスタグラムで、商品や参加店舗及び企業を紹介していく仕組み。斉藤さんは芸能人や政治家、企業ら顧客のどら焼き用焼印6000本を預かるだけに、コロナの影響を受けて苦しむ店舗や企業の声を数多く聞いてきた。企画した経緯について「銀座の街に恩返しじゃないですが、たくさんあるいいお店や商品に、少しでも興味を持ってもらえたら」と説明した。

近所の老舗弁当店「木挽町辨松」の廃業も立ち上がる契機になった。「うちも古いので、複雑な気持ちと悲しい気持ちが入り交じって。銀座の店がどんどん倒産や閉店していく前に、何とかしたいとの気持ちもありました」と明かした。

開始1カ月で、歌舞伎座やあんぱんで有名な銀座木村家、約2年前に銀座に進出した高級ホテル、ハイアットセントリック銀座東京ら18社が賛同。斉藤さんは「SNSで拡散して『ウチも』『ウチも』と、どんどんつながっている状態です」と手応えを口にした。今後、高級果物店の銀座千疋屋やユニクロ銀座店が賛同者に名を連ねる予定だ。

一方、斉藤さんも本業で苦境に立たされている。コロナでイベントが軒並みなくなり、売り上げは8~9割減。緊急事態宣言が5月末まで延長が決定した。「自粛していてももたない」と短縮営業を続けていたが、連休明けの5月7日以降は未定だ。「先の見えない不安なので、(銀座の)皆さんもかなり怖がっています。今後は想像がつかないですよね。店も続けるかどうか、迷っています」。

コロナ収束後、賛同者連名で国か東京都に、最後の物品などを寄付する予定。斉藤さんは「今は、銀座にこういうお店があると再認識していただく。そしてコロナが収束したら、ぜひ来ていただきたいです」と、前向きに呼び掛けた。【近藤由美子】