松尾邦弘元検事総長(77)ら検察OBが15日、法務省に対し、検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正案に反対する意見書を提出した。

松尾氏らは同日、都内で会見を開いた。元最高検察庁検事の清水勇男氏は、今回の意見書を提出した動きについて「私は1964年(昭39)に任官し、ロッキード事件を担当し、ロッキード仲間に声をかけた」と語った。

1976年(昭51)のロッキード事件は、米ロッキード社から政界に資金が流れたことが明らかになり、田中角栄元首相ら政治家、全日空、丸紅の幹部ら16人が起訴された。清水氏は「あの事件で(政治家の)逮捕に成功した。政治的な影響は、全くなかった。後輩に対しても、政治的な影響の中で、悪いものは悪いとはっきり言えるような組織にならないと。特捜部は、その先兵。自由な雰囲気…当時は政治家も、あまり事件に関与、口出しはしなかった」と語った。

清水氏は、1954年(昭29)の造船疑獄事件の際、当時の犬養健法務大臣が検察庁法第14条による指揮権を発動し、後に首相となった自由党の佐藤栄作幹事長の逮捕中止と任意捜査を指示したことを踏まえ「(造船疑獄事件が)私も含め、いかに検察の世界に大きな影響を及ぼしたか、こんなことがあってはいけないと。政治的関与の負の連鎖を断ったのがロッキード事件。検察は、やっぱり巨悪を見逃すようじゃいけないというのが基本的な考え方」と語った。

その上で「政治の方も、検察には圧力をかけない。検察人事は、伝統的に検察が積み上げている。内部でいつも検討している。この次は、この人と、みんな考えている。歴代の政府は口は出さなかった。不干渉の慣例が破られようとしている。それが法律になると恒久化する。許し難いと言うことが我々を動かした」と訴えた。  【村上幸将】