福島・二本松市内の縫製会社「富樫縫製」では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、水着の生地を使用した「水着マスク」を製造している。現在は1日に約8000枚を生産し、約5000枚は同社のホームページ(HP)上で販売。教育機関や行政機関への注文対応が終了し、残りの約3000枚は大手チェーン企業などに供給していく予定だ。

同ウイルスが流行し始めた2月下旬。同社に経済産業省からマスク製造の打診があり、また女性従業員に「地元でマスクを購入するために長蛇の列が出来ている。それでも購入できない人がいる」と相談された富樫三由社長(71)は、中国から購入していた生地の輸入も厳しくなり、水着の製造が難しくなった経緯から、試作を重ねて商品化にこぎつけた。

3月中旬から販売を開始すると、全都道府県から注文が殺到し、開始数分で売り切れるヒット商品となった。1枚500円で、洗えば繰り返し使用できる。予約等はできず、一時はHPの閲覧数が1日8万を超える人気ぶりとなった。富樫社長は「6月末までに累計50万枚」と増産を計画。従業員が一丸となり、休日返上で作業を行っている。

購入者からは感謝の気持ちを記した手紙やファクスなどが届き、従業員の励みとなっている。富樫社長は「東日本大震災の時に多くの支援をいただいた恩返しをしたい。商売をしてきてこんなに感謝されたのは初めてです」。同社は今年で創業50周年を迎えた。節目の年に福島から全国各地を支えている。【相沢孔志】