米ミネソタ州で無抵抗の黒人男性が警官に首を押さえつけられて死亡した事件をめぐり、抗議行動が29日(日本時間30日)までに、全米に拡大した。

トランプ大統領が「略奪が始まれば銃撃が始まる」などとつぶやくと、ツイッター社が警告を出したほか、歌手テイラー・スウィフトが痛烈に批判するなど、異例の展開をみせている。

米国などの報道によると、事件は25日に発生。警官が、ジョージ・フロイドさん(46)に偽札使用の疑いがあるとして、ヒザで首を地面に押さえつけた。フロイドさんが「お願いだ。息ができない」と何度も訴えても8分46秒も続け、死亡させた。

その一部始終を撮影した動画がSNSなどで拡散し、ミネアポリスで始まった抗議デモが、ニューヨーク、ロサンゼルス、アトランタ、シカゴ、ヒューストンなどほとんどの主要都市に広がり激化。警官との衝突や、警察署への放火、店舗の略奪など一部は暴徒化している。首都ワシントンのホワイトハウス前でも「息ができない!」などと叫ぶ人々と警備当局が衝突した。ミネアポリスでは夜間外出禁止令が出され、生中継中だったCNNの取材班が一時拘束される騒動も起きた。

この事態に、トランプ大統領は、ツイッターで略奪行為に対し「どんなに困難でも我々はコントロールする。略奪が始まれば銃撃が始まる(when the looting starts,the shooting starts)」などと武力行使も辞さない構えをみせた。この投稿に対し、ツイッター社は「暴力を賛美する内容を禁止する利用規定に違反した」とし警告文をかぶせた。

「when the looting starts, the shooting starts」というトランプ発言は、60年代のフロリダで公民権運動の取り締まりに関連して使われた言葉と同じで、当時を想起させる背景もあるという。

ツイッターで約8600万のフォロワーを持つテイラー・スウィフトは、トランプ発言に「ずっと白人至上主義や人種差別主義の火種をまいてきた。私達は11月(の大統領選で)、あなたを落選させる」などと痛烈に批判した。事件や人種差別に対しては、歌手のジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデら著名人も続々と抗議の声を上げている。

現場にいた警官4人は懲戒免職となり、ヒザで押さえつけていた白人の元警官デレク・ショービン容疑者(44)が第3級殺人と第2級故殺の疑いで逮捕・起訴された。ミネソタ州の第3級殺人罪は、殺害の意図はなく、非常に危険な行為で死亡させた場合に適用され、群衆に向けて発砲し殺害したケースなどで知られるという。遺族らは第1級殺人罪の適用を求めている。起訴状によると、被害者は心臓疾患があったという。また、面識は不明だが、容疑者と被害者は昨年まで同じクラブで警備として働いていたとの情報もある。

トランプ大統領は遺族と話したと明かし、「起きてはならないこと」などとも強調したが、コロナ禍の中で米国の緊張と混乱は続いている。