長野県木曽郡王滝村の「自然湖」を目指した。木曽おんたけ観光局のホームページには「長野県の中でも、かなりの山奥。県境も超えられないほどの行き止まりの場所。そんな場所に長野県木曽郡王滝村はあります。」と書かれている。その村の中心部から、王滝川沿いにさらに進む。崖が迫り、落石注意の看板も目につく。車1台通るのがやっとな道を越えると、立ち枯れした木が、湖から突き出た「自然湖」が見えてくる。水鏡となった湖面は正確に枯れ木を映し、どこまでが水際か分からない。

「自然湖」は84年の王滝村を震源とする、長野県西部地震の土砂崩れで、王滝川の一部がせき止められて生まれた湖だ。深い谷間だったため、元からあった木々が水没し今の形となった。周囲は急な崖で歩くことはできないが、カヌーで湖をまわり、景色を楽しむ事が出来る。

立ち枯れした木は、徐々に朽ちて行き、毎年減っている。湖の深さも流れ込む土砂や石で浅くなっており、いずれ元の川の姿に戻ると考えられている。自然の復元力に驚かされるとともに、神秘的な光景が見られなくなるのは、寂しくもある。県境も越えられないほどの行き止まりの場所には、人間の力の及ばない大自然がある。【滝沢徹郎】