青森県の天然記念物に指定されている寒立馬(かんだちめ)が、出産シーズンを迎えている。

下北半島最東端・東通村の尻屋崎では母馬に寄り添う子馬の姿も。耐寒、耐久、粗食性に富んだ田名部馬に外来種が交配され、農耕馬としてのたくましい体格が生まれた。

4月から11月までは尻屋崎灯台付近に、12月から3月までは近隣のアタカ地区に放牧。厩舎などでの管理ではなく、野生の状態が限りなく保たれる。95年に一時、9頭まで減ったが、保護対策で現在は母馬20頭、子馬3頭、種馬1頭に加え、昨年生まれた2歳馬5頭も元気だ。

保護管理に携わる中里市松さん(67)は「出産時期をいちばん気にかけています。天気の良い日は灯台近くの開けたところにいますが、雨の日などは風雨を避けるため林の陰に隠れる知恵もある」と説明。防風林に囲まれた牧草地で草を食す静寂さは趣深く、子を宿した母馬が地面に背中をこする様子も見られた。自然交配で、出産は人の手を貸すが、時に自然の中で出産することも。朝夕、中里さんが個体数や異常がないかを確認し、冬は干し草などを与える時もある。今月中にはあと3頭の子馬が誕生する予定だ。【鎌田直秀】