【ローマ共同】「水の都」として名高い世界遺産のイタリア北部ベネチアが4月に導入した入場料について、増えすぎた観光客の抑制効果が疑問視されている。最初の11日間で市の予想を大幅に上回る収益があり、市民からは「街は観光客でいっぱいだ」と批判が噴出。市は「まだ試験段階」としており、方法は今後見直していくという。

ベネチアでは、観光客が住民の生活や環境を脅かす「オーバーツーリズム」が深刻化。市は4月25日、対策として、日帰り客からの入場料5ユーロ(約840円)の試験的な徴収を開始した。適用は主に旧市街で、今年は混雑が予想される連休や週末など7月までの計29日間に導入される。

市によると、イタリアの連休の期間と重なった今月5日までの11日間では、約19万5千人が料金を支払い、約98万ユーロの収入があった。当初は29日間での収入を70万ユーロと想定しており、大きく上回る結果となった。

オーバーツーリズムの問題に取り組む市民団体のトッマーソ・カッチャリさん(46)は「市の収入が増えるだけで、根本的な問題の解決に役立っていない。完全な失敗だ」と疑問の声を上げる。

主要紙コリエレ・デラ・セラによると、今年のデータを考慮した上で、来年は導入する日数を増やすことや、入場料を10ユーロに値上げすることなどが検討されているという。ブルニャーロ市長は「入場料の目的は住民の生活を改善することだ。方法は修正可能で、課題を一歩ずつ乗り越えていきたい」とコメントした。(共同)