将棋の藤井聡太七段(17)が28日、最年少での初タイトル獲得へ王手をかけた。東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第2局で渡辺明棋聖(36)を下し、2連勝。藤井は和服での初白星も飾った。

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将棋の棋士は、勝負のかかった一戦で、和服に袖を通す例が多い。

6月20日の竜王戦3組決勝で藤井と「師弟対決」となった杉本昌隆八段が、和服姿で臨んだのは記憶に新しい。「今日の対局は大きな一番。ここで気合を入れなければ、気合を入れる場所がない。藤井七段に対する礼儀だと思いました」と、対局後の会見で話した。

杉本は昨年2月の順位戦C級1組でも着用。9連勝及び弟子とのダブル昇級を目指したが、船江恒平六段(38)に敗れた。

過去には93年度の第52期A級順位戦7回戦で田中寅彦九段(63)が、6連勝していた羽生善治竜王(肩書は当時)の前に和服で現れた。外見でも対局でも圧倒して、文字通り「気合勝ち」。羽生はこの期の名人戦挑戦者として、米長邦雄名人(故人)から奪取している。田中はしばらく「ハブに勝ったトラです」と自慢していた。

女流棋戦でも90年代半ばあたりから和服同士でのタイトル戦が繰り広げられ、華やかさを演出している。08年の第30期女流王将戦で挑戦者として登場した矢内理絵子女流名人(当時)は、母親の形見の着物で対局に臨んでいる。

もっとも、和服は義務づけられているものではない。スーツにネクタイ、夏場ならクールビズ、学生なら制服でも構わない。

囲碁の場合はスーツ姿が多い。中国、韓国、台湾との国際棋戦はイスでの対局も多い。「国内のタイトル戦でもあまり和服姿は見かけません」(日本棋院)。26日に終了した十段戦5番勝負でも、現在行われている本因坊戦7番勝負でも、スーツ姿で打っている。【赤塚辰浩】