新型コロナウイルスの感染拡大が続き、夏休みシーズンでも、多くの観光地は閑散としている。旅行に行きたいけど、行けない-。そんな中、家にいながら観光ができる「オンライン観光」が人気を集めている。沖縄県・宮古島のマリン・アクティビティ会社「グラッツサップ」(北川敬之代表)はビデオ会議システムを通じて島の魅力を発信している。

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白い砂浜、クリアブルーの海、心地よい波音-。家にいながら「東洋一きれい」と言われる与那覇前浜ビーチを実際に訪れているようだ。写真ではなく、行動の自由が利く動画で、スタッフが利用者のリクエストに柔軟に対応する。観光だけでなく、地元で人気のグルメなども知ることができ、利用者からは「ガイドブックがいらない」と好評だ。朝日や夕日を背景に行う、オンラインヨガも人気となっている。料金はともに1500円。

同社の北川さんは、コロナ禍で旅行がキャンセルになった人に「何か代わりのサービスを提供できないか」と考え、緊急事態宣言発令時に、サービスを開始したと話す。沖縄では感染拡大が続き、宮古島市の担当者によると、7月の入域観光客数は、昨年同月比で約6割減だという。同社でも予約は4月から「今も9割減が続いている」。北川さんによると、オンライン観光は外国人を始め、海外出張中の日本人など、月に100人ほどが利用しているという。中でも、旅行がキャンセルになった東京からの利用者が、約7割を占める。少しでも旅行気分を味わおうと、シュノーケルを着け、参加する人もいたという。

オンライン観光を通じて、高齢者や、特別支援学校の生徒ら、これまでは触れ合うことが少なかった幅広い客層とも出会うことができた。ツアー予約は激減し、厳しい状況が続くが「それと同時に生まれたのが、オンライン観光」と話す。オンライン利用者を感染収束後の来島につなげたい思いはある。同時に、オンライン観光自体を楽しんでくれた客層と出会ったことで、収束後もオンライン観光は続けていこうと考えている。

コロナ禍の生活は当初考えていたより、長期化している。既存のサービスだけでは乗り切れなかったが「早い段階で新しいチャレンジをしたのが良かった。今はそう思う」と新たな発見に、笑顔を見せた。【佐藤勝亮】