藤井聡太2冠誕生を受け、師匠の杉本昌隆八段(51)が日刊スポーツに特別メッセージを寄せた。小学1年で出会い、小学4年から師匠として成長を見守り続けてきた。最強の道を歩む愛弟子に「真理」の2文字を贈った。
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複数冠タイトル保持者となりましたが、まだ将棋界にはタイトルがたくさんあります。順位戦A級に昇るまで、いくつも難関があるでしょう。名人はさらにその先にある。これからも続く挑戦の中、私から贈りたい言葉があります。
「真理」
信じるの「信」の文字も浮かびましたが、永遠、不変の真理、真実の道理。これからも将棋の真理を探究してほしいという思いがあります。真理(まり)? こんな名前の女性がいそうですね。なんか深読みされないかな(笑い)。
冗談はさておき、昨秋の王将戦では、あと1歩でタイトル初挑戦を逃した苦い経験をしました。その後、私は著書「悔しがる力 弟子・藤井聡太の思考法」(PHP研究所)にこうつづりました。
「藤井がタイトルに挑戦する時は、過去の若い挑戦者とはまた違う、万全の実力を身に付けた状態で来るはずです」
藤井2冠の場合、挑戦するときは勢いではなく、タイトルホルダーと互角の力を付けたときだろうなと思っていた。まさに予想通りになっているなと思います。
藤井2冠は、相手の得意から逃げない。考えたいときは終盤の持ち時間がなくなっても、とことん考える。これは明らかに目先の勝負ではなく、勝敗よりも強くなるということを考えた取り組み方です。子どものころから一見、ムダに見えても、考え続けたからこそ、いまの実力がある。
他の人が思うであろう俗物的なこと、優勝賞金がどうだとか、タイトルまであと何勝とかの発想が、かけらもなさそうですね。その思考法は「将棋の真理を探究する」が一番近いのかもしれません。
今シリーズの王位戦は内容もすばらしかった。これまでの挑戦者の将棋ではなかった。古くは大山時代、中原時代、谷川時代、羽生時代と続く、新しい時代の担い手となり、時代を牽引(けんいん)し続けてほしい。(将棋棋士八段)

